イングヴァール・カンプラード 家具のフラットパック(家具を分解して収める省スペースの梱包)の王様カンプラードは聡明で型にはまらない経営者だ。リチャード・ブランソンのように、既成の権威に挑戦し、不利な状況にあってもそれをひっくり返すことを楽しんでいる。

 子どものころから勤勉だったカンプラードは、スウェーデンの家具業界のカルテルに挑み、巧みにその裏をかいた。結局は、常にカンプラードが予見した通り、顧客は自分たちの要求を満たす製品だけを買った。顧客が要求したのは、安くて高品質な製品である。

 カンプラードは、フラットパックやセルフサービスといった革新的な手法を打ち出して、一般大衆に価格に見合う価値のある製品を供給し続けた。イケアでの買い物は、家族そろって出かける楽しいイベントになった。しかもそれは郊外型のショッピングセンターが出現するはるか以前のことだった。

 1986年にカンプラードがイケアの経営の第一線から公式に身を引いたころには、小売りの形態を変革し、何千人もの起業家に刺激を与えていた。

生い立ち

 イングヴァール・カンプラードは1926年、スウェーデンのスモーランドにある荒涼とした田舎町エルムタードの農場で生まれた。厳しい環境の中で育っている。1920年代の終わりから1930年代の初めにかけてのスウェーデンは、人が育つような環境とはとてもいえなかった。しかし、カンプラードは若者らしい情熱にあふれ、すぐにその豊かな才能を発揮し頭角を現した。

成功への階段

 最初に始めたささやかな仕事は、近所の人たちにマッチを売ることだった。当時5歳だった。それが獲った魚の販売や、採取したコケモモをバスで出荷するビジネスへと進化した。初めてまとまったお金を手にしたのは、園芸用の種子の販売だった。新しいレース用自転車とタイプライターを買うには十分な金額だった。

 1943年に自分の会社を興したとき、カンプラードはわずか17歳だった。それをイケア(IKea)と名づけた(後に文字がすべて大文字に変えられる)。IKは自分のイニシャルから取り、EとAは、自分が育った農場のあるエルムタード、そして生まれ故郷の村アグナリッドから取った。