今、成長戦略の新しいアプローチとして「カテゴリー・イノベーション」が注目されている。新しいカテゴリーを創出し、それを代表するブランドになることで、競争せずに事業を成長させる戦略だ。電通グループでは、電通ならではの発想力を生かしながら、そのコンセプトを基に、独自のコンサルティングサービスを展開している。

狙うのは「本格的」なカテゴリー・イノベーション
カテゴリー・イノベーションは市場に与える影響の程度を反映して3段階に分けられる。現実的に狙うのは、インパクトが少ない漸進的イノベーションでも、創造するのが難しい変革的イノベーションでもなく、その中間の本格的イノベーション。製品やサービスの改善が極めて大きいために、顧客は他ブランドを検討しないようになる
(『カテゴリー・イノベーション』デービッド・A・アーカー著より抜粋)

 昨日まで利益を生み出していた製品やサービスが、コモデティ化の嵐に巻き込まれ、いつの間にか提供価値を失っている。そのような競争の激しい市場の中で、カテゴリーそのものを革新することで、顧客への提供価値を創造するのが「カテゴリー・イノベーション」という考え方だ。新カテゴリーの本格的な創出は、既存カテゴリーの魅力を失わせ、戦わずして勝つことが可能になる。では新しいカテゴリーを創出するためには、何が必要となるのか? その一つが、ソーシャルメディアを利用したアプローチである。

ソーシャルメディアの利用で
進化するブランド戦略

小西圭介
電通
ビジネス・クリエーション局
コンサルティング室

 電通ビジネス・クリエーション局コンサルティング室の小西圭介氏は、「ソーシャル時代の生活者は、企業やブランドの活動に積極的に参加したがっています。 もはやブランドは企業が一方的にコントロールできるものではなく、生活者と一緒に創り上げて(コラボレーションして)いくものになっている」と指摘する。

  例えば、発売予定商品の事前モニターになる、商品サービスの評価を行う、新商品開発のアイデアを出す、サービス改善のアドバイスをする等々。ブランド先進企業と呼ばれる企業は、すでに価値創造のドライバーとして顧客が参加できる各種のコミュニティを構築し、顧客と一緒に新しい価値を生み出していくアクションを取っている。

「これまでブランドは目に見えない資産といわれてきましたが、ソーシャルメディアの進化によって、ブランドと顧客の絆が可視化されつつある。製品にイメージで付加価値を付けるのが“形容詞”のブランディングだとしたら、ソーシャル時代は価値観を共有する人(コミュニティ)が一緒に価値を生み出す“動詞”のブランディング」(小西氏)

 今後カテゴリー・イノベーションはこうした土壌から生まれてくるはずで、企業がしなければならないのは参加者にアクションを起こさせる「共有価値」を追求すること、つまり「顧客の行動を促す“動詞”を探すこと」(小西氏)になるという。