第2章

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 1時間後、総理は総理執務室で村津と向き合って座っていた。

 秘書にもしばらくの間は2人で話すから、電話は取り次がず、入室時には必ずノックをして返事を待つように言ってある。

 2人はしばらくの間、お互い腹の探り合いのように無言で見つめ合っていた。

「作業の進展はどうですかな」

 先に口を開いたのは総理の方だった。

「チームが発足してまだ半月たっていません。進展などありません」

「ゼロからの出発ではないはずです。あなたにとっては」

「そうおっしゃいますと――」

「前は首都機能移転準備室の室長を長く勤めておられる」

「その組織は数年前に解散されました。私は全く別の組織と思っています」

「しかし、いずれにしろ国交省という古巣に戻ったわけだ。以前の知識や経験までが消えたわけではないでしょう」

「私だけです。戻ったのは。あとのメンバーはすべて若手で、一から勉強と調査をやり直しています」

「前のメンバーは?」

「海外勤務に出ている者、新しい部署で仕事をしている者、すでに退官している者、様々です」

「なぜ彼らをメンバーに加えなかったのですか」

「人事は私の及ばぬところです。しかし、彼らを呼び戻すというのは酷というものです。展望の見えない仕事を続けるというのは、志ある人を殺すに等しい。とくに優秀な若手にとっては。上司としてそれは出来ません」

 はっきりとものを言う男だ、と総理は思った。しかし、その通りだ。今までは──。