エッセンシャル版マネジメント
ダイヤモンド社刊 2000円(本体)

 「企業をはじめとするあらゆる組織が社会の機関である。組織が存在するのは、組織のためではない。自らの機能を果たすことによって、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためである。組織は目的ではなく、手段である」(『エッセンシャル版マネジメント』)

 ここにいう組織とは、企業、政府機関、非営利組織など、特定の目的を持つ人間集団を指す。これらは、家族、親族、地域共同体など、絆そのものに価値を持つ人間集団と異なり、目的は組織の外にある。組織の外である社会に対し価値ある成果をもたらすがゆえに、社会の資源を委ねられているにすぎない。

 その組織を動かすものがマネジメントである。ドラッカーはマネジメントには、組織を社会に貢献させるうえで、基本とすべき次の3つの役割があるという。

 第1に自らの組織に特有の使命を果たすことである。 

 第2に仕事を通じて働く人を生かすことである。現代社会においては、組織が、生計の源、社会的な地位、コミュニティとの絆、自己実現を手にする手段である。

 第3に自らの組織が社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題の解決に貢献することである。

 最近目にする組織の不行状、不祥事の多くが、これらの基本を忘れたことに起因しているかは明白である。

 「転換期にあって特に重要なことが、変わらざるものとしての基本と原則を確認することである」(『エッセンシャル版マネジメント』)