何に対して貢献するか<br />どのような貢献ができるのか<br />仕事ができる者は自分で考えるダイヤモンド社刊
1890円(税込)

「成果をあげる人とあげない人の差は、才能ではない。成果をあげるかどうかは、いくつかの習慣的な姿勢と、いくつかの基礎的な方法を身につけているかの問題である。しかし、そもそも組織というものが最近の発明であるために、人はまだ、それらのことに優れるにいたっていない」(『プロフェッショナルの条件』)

 一流の仕事ができるようになるには、生まれつきの才能などいらないというのだから、うれしくなる。しかも必要なのは、習慣的な姿勢と基礎的な方法だけだという。

 習慣的な姿勢と基礎的な方法で十分というのならば、誰でも身につけられる。しかし、ここで大きな「しかし」がつく。組織というものが、最近の発明であるために、われわれはまだ、組織で働くことに慣れていないという。

 18世紀の産業革命の後、大勢の人間が一緒に働くようになった。ジェームズ・ワットが実用蒸気機関を発明したのが1776年、それからわずか230年である。いかに習慣的な姿勢といっても、230年では身につかない。いかに基礎的な方法といっても、誰も教えてはくれない。そもそも学校の先生には、組織で働いた経験がないからである。

 ドラッカーは、たとえば、身につけるべき習慣的な姿勢とは、こういうものだという。ペーパーワークと医師のさまざまな要求に追われている病棟の看護師は、大勢の外科の患者を見ながら、こう考える。

「彼らが私の仕事だ。ほかのことは邪魔でしかない。この本来の仕事に集中するにはどうしたらよいか。仕事の仕方に問題があるかもしれない。もっとよい看護ができるよう、皆で仕事の仕方を変えられないだろうか」

 成果を上げるには、何に貢献するかを考えなければならない。すなわち、この看護師のように考える。次に、自分は何を最も貢献できるかを考えなければならない。すなわち、自らの強みを知る。

 まことに、簡単なことである。その簡単なことを、ドラッカーは教えてくれる。

「成長のための偉大な能力をもつ者はすべて、自分自身に焦点を合わせている。ある意味では自己中心的であって、世の中のことすべてを成長の糧にしている」(『プロフェッショナルの条件』)

週刊ダイヤモンド