国内のスーツ市場の飽和が指摘される中、紳士服専門店の業績が好調だ。その要因を業界大手のはるやま商事のトップに聞いた。

はるやま商事社長 治山正史<br />節約疲れ、自粛疲れの消費心理が出てきているPhoto by Kiyoshi Takimoto

──昨年12月から既存店の販売好調が続いている。

 昨年の秋ごろから単価が上昇傾向にある。いらないものは買わない、必需品はなるべく安く買う一方で、いいものを買おうという消費マインドが出てきている。これは震災後の節約疲れ、自粛疲れの反動もあるだろう。

 昨冬はストレッチ素材のスーツがよく売れたが、震災以降、ストレスを感じる場面が一層増えており、少しでもリラックスできる商品が喜ばれるようになったからではないか。年明けからは、新入社員向けの商戦が好調だった。

 また、レディースが好調なことも既存店が伸びている要因の一つだ。レディースのブラウスやスーツは、意外と買うところがない。カジュアルな衣料はいろいろな小売店で売っているが、ブラウスは置いていない。レディースは今、売り上げの十数パーセントだが、もっと伸びる余地がある。

──夏のクールビズ商戦の見通しはどうか。

 昨夏のクールビズ商戦はおおむね好調に推移したものの、(シャツなどの)軽衣料中心で、スーツの売り込みが足りなかったために夏場に利益を落としてしまった。そのぶんを秋冬で取り戻したのが前期の決算だった。

 今年はその反省を踏まえて、ものづくりからスタートした。その結果が、非常に軽くて風通しがよく、しわにもなりにくい約380グラム(上着のみ)の超軽量スーツや230グラムのジャケットなどの高機能商品。こうした商品が店頭にそろった6月以降の売り上げは昨年以上に期待できる。