電気料金の値上げや、電力需給の逼迫など、「節電」に対するプライオリティは、ますます高まっている。しかし節電で効果が高いのに、じつは盲点となっているのが「ポンプ」の存在だ。製造工場の現場はもちろん、事務中心のオフィスビルといった身近な場所でもポンプの恩恵にあずかっている。その効果と対策を見てみよう。

井上 裕喜氏
グルンドフォスポンプ
サービス部 マネージャー

 目下、日本は「節電」という難題と直面し続けている。とりわけ今夏は、全国的に電力の需給が逼迫すると目され、各地の工場で操業時間帯の見直しをはじめとする様々な節電努力が積み重ねられている。

 これを読んでいる方々のオフィスでも、空調を抑えたり、照明を間引いたり…と細かい努力を積み重ねている所は多いだろう。しかし、もっと根本的とも言えるところから徹底して電力使用量を抑える方法がないものか、と考える人も多いのではないだろうか?

 デンマーク発で50ヵ国以上にネットワークを広げる世界最大級の汎用ポンプメーカーの日本法人・グルンドフォスポンプ・サービス部の井上裕喜マネージャーは次のように指摘する。

世界で消費される電力の10%が
ポンプを稼働させるのに使われている

 「世界で消費されている電力のうち、その約10%が地下水のくみ上げや工場の給水・排水などに用いられるポンプによって使用されています。また、ポンプの所有者コスト(購入、設置から運転、保守、廃棄までトータルで発生する経費)を見ると、ポンプにかかるコスト全体の約85%をエネルギーコスト(電気代)が占めているのです」

 つまり、ポンプは相当の電力を消費する存在である、ということである。これを見直すことで、高い節電効果が見込める可能性がある。

 ただ「ポンプ」と聞いて、自分には関係ないと思う人も多いかもしれないが、それは誤りだ。ポンプは工場のみならず、オフィスビルの空調やホテルのセントラルヒーティング設備などで、じつに幅広く使用されている。「ポンプ」について考えることは、製造業にとどまらず、さまざまな業種の人々に直接関わってくる課題なのだ。

 ところで、ポンプの電力消費量は個々の製品ごとにそれほどの差が生じるものなのか? 新しいものに取り替えたからといって、目を見張るような節電効果がすぐさま生じるものなのだろうか? 

 「たとえば、エコカーのエンジンのほうが一般車より燃費が優れているのと同様に、ポンプも製品の特長や備えている性能によりエネルギー効率に差が出ます。しかも、最近のポンプは、需要に応じた出力コントロールができます。弊社のインバータ内蔵型ポンプは負荷に応じて自分で自動的に出力を調整するため、制御機能という面からも省エネ性能が高いのです」(井上マネージャー)