オバマ政権下で日米関係はどう変わるのか。そうした問いかけを、外交ジャーナリストで作家の手嶋龍一氏は「天気予報論」と斬って捨てる。日米同盟は東アジアの要であり、日本の側から全体構想を示しリードしていくべきというのだ。(聞き手/横山一郎)

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手嶋龍一(てしまりゅういち)
外交ジャーナリスト・作家
1997年から2005年までの8年間、NHKワシントン支局長を務める。9.11同時多発テロ事件の際には、11日間にわたる24時間連続の中継放送を担当。2005年独立し、外交ジャーナリスト・作家に。現実の出来事が物語を追いかけていると注目されたインテリジェンス小説『ウルトラ・ダラー』(新潮社)はベストセラーに。最近では、バラク・オバマ次期米国大統領など国際政局の最前線で活躍する29人のルポルタージュ『葡萄酒か、さもなくば銃弾を』(講談社)が好評。撮影/佐々木写真事務所

―オバマ新政権になり、日米関係はどう変化していくのでしょうか。

 僕はそうして日米関係の行方を心配する空気を「日米関係天気予報論」と呼んでいます。北京オリンピックを例外に、人は天気の行方には関与できません。日本の政財界のリーダーは、かつてのクリントン民主党政権時代のように、オバマ政権では日米関係が暗転するのだろうかと息を潜めて観察しています。実は、そうした姿勢自体に問題があるのです。世界第一と第二の経済大国の安全保障上の盟約である日米同盟。日本は、東アジアの要なのです。日本の側から、東アジアの安全保障をどうデザインするか、全体構想を示して、リードしていくことが肝要なのです。

 バラク・オバマ氏とは何度かお会いしたこともありますが、聡明な人物です。大統領選勝利演説の際にも、にこやかな表情で勝利の喜びを表わしていました。だが、まったく浮ついた感じがありません。むしろ政権の先行きを考えて、その責務の重さをひしひしと噛み締めている様子がうかがえました。改めてこの人のリーダーとしての資質の高さに感じ入りました。