米国では連休明けとなった20日。世界は、ワシントンで行われた、米国では黒人初のバラク・オバマ大統領の就任に沸きかえった。しかし、この歓喜の渦とはあまりにも対照的なことに、同じ日、ニューヨークの株式市場はダウ工業株30種平均が前週末に比べて300ドル以上も急落する事態に陥った。昨年11月半ば以来という8000ドル割れを記録したのである。

 米国では、大統領の就任から3ヵ月あまりを「ハネムーン期間」と呼ぶ。この間は、議会やメディアがそろって新大統領に対する批判を控えて、その船出を見守る慣例なのだ。

 ところが、今回、株式市場は、新大統領の就任のその日から、この慣例を無視した。いわゆるご祝儀相場が存在しなかったのだ。

 過去数ヵ月、世界経済の唯一の危機脱出の期待の星だった「オバマ経済対策」に早くも翳りが出た印象は否めない。いったい、市場は、オバマ経済対策の何に失望を感じ始めているのだろうか。

就任への期待感に全米が沸くも
マーケットの反応は鈍く

 オバマ大統領は、1937年に就任したフランクリン・ルーズベルト大統領以来の伝統にのっとり、首都ワシントンで就任式に臨み、第44代の大統領に就いた。寒波の来襲で気温は氷点下だったにもかかわらず、その模様を一目でも見ようと、180万人を超す人々がワシントンの街に繰り出した。直接、ワシントンに行けなかった多くの人々は、各地の大型スクリーンや事業所、自宅のテレビの前に陣取った。加えて、インターネットのライブ中継で、宣誓式や就任演説、就任パレードなどの様子に見入った人は2130万人に達したという。まさに世界の視線が釘付けとなったのだ。

 そして、これらの人々は、オバマ大統領の演説に酔いしれた。その経済危機に関する対応の柱を抜粋すると、

 「我々は危機のまっただなかにいる。経済は一部の人々の強欲と無責任の結果、ひどくぜい弱になった。新しい時代の準備をしてこなかった全体の失敗とも言えるが、(多くの人が)家が失われ、仕事も奪われた。企業は破綻した。健康保険はコストがかかりすぎ、多くの学校が荒廃している」

 「直面している危機は現実のもの。深刻で大変な危機である。とても短期間では解決できないが、必ず解決できる」

 「我々は依然として地球上で最も強い国家。労働者の生産性が落ちたわけではない。立ち上がり、ホコリを落とし再生する作業を始めなくてはならない」