食品業界に7社目の「売上高1兆円企業」が誕生する。

 9月11日、明治乳業と明治製菓が来年4月に経営統合すると発表した。両社の売上高合計は約1兆1000億円で、日本ハムを抜いて食品業界6位にのし上がる。

 ちなみに売上高が1兆円を超える食品メーカーはJT、キリンホールディングス、サントリー、アサヒビール、味の素、日本ハムの6社しかない。

 そもそも両社は明治製糖(現・大日本明治製糖)を母体とする兄弟会社。明治乳業は乳業が中心で、雪印グループの解体で2003年から乳業トップ。

 かたや明治製菓は、菓子業界2位で医薬事業も手がけている。事業の重複がほとんどなく、株式を持ち合っていることから、以前から経営統合のうわさが絶えなかった。

 明治製菓は昨年、MBO(経営陣による自社買収)でリストラに取り組んで来年にも再上場すると目されるポッカコーポレーションに資本参加し、持ち分法適用会社にしている。これによって、同じ飲料事業を展開する明治乳業との距離感も縮まった。

 加えて、原料費高騰と市場縮小が、経営統合に向かう両社の背中を押す。

 乳原料や穀物相場の急騰を受けてメーカーは値上げに奔走しているが、食品業界に先んじて再編が進んだ流通業界の価格支配力は強い。原料高騰分の価格転嫁は厳しい状況であり、実際、両社の前期決算は揃って減益だった。

 もっとも、1兆円企業でさえ先行きが明るいとはいえないのが、昨今の食品業界。少子高齢化による市場縮小で国内依存の成長持続には限界がある。明治乳業、明治製菓合計の海外売上比率は1割にも満たず、単独での国際展開は難しい。

 売上高10兆円超のネスレ(スイス)、5兆円超のユニリーバ(英国・オランダ)など、積極的な企業買収を続ける海外大手との格差は開く一方。今回の経営統合は、日本の食品メーカーが国際競争で勝ち残るためのほんの序章にすぎない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 小出康成)