「ひらめき」というのは、論理から離れた発想です。そのためか、ロジカル・シンキングよりも軽視されがちだと感じます。しかし、私はこの「ひらめき」を重視し、ヒット商品を生み出してきました。その1つ、1994年に輸入フレグランスの売上高で1位となった「プチサンボン」の事例を紹介します。

ロジカルに考えないための「脳内ホワイトボード」

  「ひらめき」というのは、論理から離れた発想です。そのためか、そこから生まれた着想は、ロジカル・シンキングよりも軽視されがちのように感じます。

 しかし、我々は無意識のうちに、ひらめきから仮説を組み立てて行動していますし、多くのヒット商品や発明は、ひらめきから生まれているのはよく知られています。ニュートンもそうです。
  彼はリンゴが木から落ちるのを見て、万有引力の発見に結びつけました。「リンゴは木から落ちる」という出来事から、発想を飛躍させられたのは、論理ではなく「ひらめき=直感」です。

  私は、何か新しい企画を考える際、「ひらめき」を重視してきました。そして、その糸口を作るために、「脳内ホワイトボード」を活用してきました。

  やり方は簡単です。まず頭の中にホワイトボードを思い浮かべます。そして、ホワイトボードの真ん中に、まず目標をドンと据えます。
  それから、その目標達成のために必要と思われる情報やデータを、目標のまわりにパラパラとちりばめて置いていきます。

  手持ちの材料に関しては、過去の売上データや商品情報、予算といった定量的な情報だけでなく、世の中の流れや上司の性格、取引先の社長夫人の趣味といった、定性的な情報も含めて並べてみましょう。

   最初の段階では、ちょっとでも役に立ちそうと思った情報は、どんどん入れ込んでいくことをおすすめします。

 この時のホワイトボードの置き方もポイント。会議室にあるように垂直な立て方をするのではなく、テーブルの上に水平に置くイメージです。
  なぜ置き方にこだわるのかといえば、垂直に立っている通常のホワイトボードのイメージだと、「重要な情報は上、あまり重要と思わない情報は下」というふうに、無意識のうちに情報に優劣をつけてしまいがちだからです。

 プチサンボンはこうしてヒットした

 では、この「ひらめき」を重視したことで、成功した実例を1つご紹介しましょう。
  それは、私がジバンシイ時代に手がけた「プチサンボン」の発売キャンペーンです。

  プチサンボンは、ジバンシイがフランスの子供服ブランド「タルティーヌ・エ・ショコラ」の依頼で作った、ベビー用のフレグランス。赤ちゃんにも香りをつけさせるとは、香水の文化や歴史が長い、ヨーロッパならではの商品開発です。

 ちなみに、私がパルファム・ジバンシイ日本法人の代表取締役だった20年ほど前の日本でのフレグランスの浸透度はというと、女性が香水を日常使いする習慣はほとんどありませんでした。

 当時は、海外旅行のお土産として有名ブランドの香水を買って帰っても、もらった女性はちょっと試した後にしまい込んでそのまま、という状況が一般的。フレグランスのマーケットは、日本の化粧品総売上の2%以下と、非常に小さいものだったのです。

  そうした状況下、「参考までに」というかたちで1991年にジバンシイ本社から送られてきたのが、プチサンボンのサンプルでした。

  さっそく包みを開けてみると、パステルブルーの可愛らしいパッケージです。

  香りを嗅いでみると、日本人が大好きな、清々しい石鹸の香り。かすかに柑橘系のフルーティなノート(香り立ち)も漂います。「これはいける!」と、ピンと来ました。
  本社にすぐ、プチサンボンをぜひ売りたいと言ったところ、猛反対。

  「他社のOEM商品を売る暇があったら、ジバンシイ本来の香水を売れ」

  「日本はまだ、大人用のフレグランスも売れてないんだから、赤ちゃん用なんて売れるわけないだろう」

 もちろん、そんなことで引き下がらないのが高倉です。