海外での裏ガネづくりが発覚した西松建設で東京地検特捜部は20日、外為法違反容疑で前社長の國澤幹雄容疑者を逮捕、前副社長と合わせてトップ2人が司直の手にかかる緊急事態に陥った。

 会社ぐるみの犯罪が明らかになったことで、西松の経営が窮地に立たされるのは確実だ。というのも2月、3月はゼネコンにとって次年度の公共工事の総合評価方式による入札が行なわれる最重要期。

 今回の事件によって評価点が下がる可能性が強く、次年度の受注への影響は避けられないからだ。

 公共工事だけでない。現在受注高の約7割を占める国内建築事業の発注元である民間企業も、コンプライアンス重視の風潮が高まるなか、西松への発注を控える公算は大きい。金融機関の融資姿勢も同様に厳格化する。

 西松が経営危機に陥った場合、業界再編の核となる可能性もある。

 「比較的レベルの高い土木技術者を揃えており、財務体質も良好。リストラで強い事業だけを残せば統合対象としては魅力的だ」と業界関係者は見る。

 確かに西松は2006年度から2期連続の連結最終赤字を計上してはいるものの、08年度中間期時点の自己資本比率は26.4%と、スーパーゼネコンを上回る財務体質。

 一方、株価の下落で現在の株式時価総額は253億円程度まで落ち込んでおり、わずか130億円で過半数が握れる計算だ。

 現在、西松は戸田建設と今年10月まで共同技術開発で業務提携を結んでおり、この提携が次なる経営統合につながる可能性もささやかれる。同クラスの前田建設工業や、メインバンクのみずほコーポレート銀行の仲立ちで、やはりみずほメインの清水建設などが救済に動くシナリオも考えられる。

 もっとも、法人として立件される事態に発展すれば、尻込みする企業も多いはず。政治家も巻き込む大スキャンダルに発展する可能性もあり、目が離せない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  鈴木洋子)