「私も給料を50%カットされました」。先日、ギリシャのアテネで、政府機関のエコノミストに公的部門の支出削減状況を尋ねたとき、彼はそう答えた。年金の支給額は既に30%カットされている。

 給与減、解雇、増税で車を持てなくなった人が増え、中古車価格は暴落している。地元紙によると、2007年型メルセデス・ベンツC200の相場はわずか1.6万ユーロという。6月の新車販売は、前年比44.3%減だった。アテネのデパートでは大幅な値引きのバーゲンが行われていた。

 一般の人々に対する増税は限界に来ている。ギリシャの地下経済は、GDPの30~45%と推計されている。そこからいかに徴税するかが重要である。恐ろしいほど非効率な官僚組織の改革も急務だ。あるビジネスマンは、新しい事業の認可を得ようとしたら役所からスタンプを17回ももらう必要があったと話していた。

 ギリシャのGDPに対する観光業の比率は15.7%(11年)。昨年はエジプトの政情不安で観光客がギリシャに流れたが、アテネで暴動やストライキが起きた。今年はクルーズ船がアテネを避けるなど、観光客が大きく減っている。

 もっとも、ある観光業関係者は、「外国のテレビが去年の暴動を度々大げさに報道し過ぎたせいで、“ギリシャは危険”というイメージが増幅された。実際の暴動は狭い範囲で時間的にも限られていたのに」と嘆いていた。ドイツ語が堪能なエコノミストは、「家でドイツのテレビを見ているが、間違った報道が多い。“ギリシャ人はいまだにこんなに贅沢なヨットを持っている”と批判していたが、それらは外国の富裕層が所有するヨットだった」と呆れていた。