9月に再上場を目指している日本航空(JAL)が、グローバル・コーディネーターから、野村証券を外した。グローバル・コーディネーターとは、国内外の主幹事証券7社を統括する。主幹事証券団の中でも最上位の立場である。これまで野村と大和キャピタル・マーケッツの2社が務めていたが、今回、野村が外れ大和1社が務めることになった。

 7月12日、JALの株主で3500億円を出資している企業再生支援機構が野村側に通達した。

 JALが再上場の準備を始めたのは、2010年10月のことである。

 JAL再上場に向けて企業再生支援機構が選定した国内主幹事証券会社は、野村、大和以外に、SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を合わせた5社。海外主幹事は2社で、メリルリンチ日本証券、モルガン・スタンレーMUFG証券が務める。野村は、当初からJALの上場アドバイザーとなり、7社ある主幹事団の中でも中心的な役割を担ってきた。

 野村がグローバル・コーディネーターを外された表向きの理由は、相次ぐインサイダー疑惑である。だが、裏には別の事情がある。

 実は、7月3日に全日本空輸(ANA)が発表した2000億円規模の公募増資でも、主幹事証券を野村が務めていたためだ。これに心象を悪くした企業再生支援機構やJALの幹部の間で、野村の扱いが問題視されていた。

 ただ、JALは、野村に国内主幹事会社として残し、個人投資家への株式販売業務を認めた。航空セクターは旅客の需要変動が激しく、業績が景気に左右されやすい。このため機関投資家は航空株への関心が薄く、JAL上場時には株主優待券目当ての個人投資家に株を売り込む必要があるからだ。野村の持つ、個人投資家への強力な販売力に頼らざるを得なかった。“二股”に煮えくり返りつつも、グローバル・コーディネーターを外すだけという苦渋の選択を迫られたようである。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)