中小企業を主な顧客とする日本振興銀行が、10月から展開している新商品が金融界の話題を集めている。

 新商品とは、「金利オンリー」という融資商品。遅滞なく金利を支払っているあいだは、要請さえすれば、元本返済をロールオーバー、つまり猶予するのが特徴で、50万~550万円の範囲で、金利は年率5.9%となっている。

 振興銀は、中小企業向けの貸し出しは実質的にエクイティの役割を果たしてきたことを重視し、資金繰りに窮している中小企業をサポートするため、元本返済の負担を最大限まで軽減した新しいタイプの商品だとうたっている。

 さらに、中小企業に対する貸し渋りや貸し剥がし解消を掲げる民主党の政策を、「中小企業における窮状を真正面からとらえた時宜を得た施策である」とべたぼめし、そうした政策にマッチした商品だと訴えている。

 だが、大手行幹部は、「どの銀行も提供している手形貸し付けと何が違うのか」と首をひねる。

 手形貸し付けとは、企業が商品代金などの決済において立て替えている経常運転資金を、手形を銀行に差し入れさせて貸し付けるもの。商売が継続している限り、返済は基本的に金利のみ、元本はロールオーバーされるのが通常で、たいして違いはないというのだ。

 ただ違うのは、企業が苦しくなっても金利さえ払っていれば大丈夫という点で、「ほかでは借りられない企業が集まって不良債権が拡大するのではないか」(大手行幹部)との声もある。

 また一部には、振興銀が小泉・竹中ラインを後ろ楯に設立・運営していたことから、「民主党政権が誕生したことで、舵を切ろうとしているのでは」(関係者)との見方も根強い。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 田島靖久)

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