地中の空洞を診るインフラの「内科医」<br />震災被災地の復旧・復興にも尽力<br />ジオ・サーチ社長 冨田 洋Photo by Kazutoshi Sumitomo

「出動だ」。昨年3月11日。ジオ・サーチ社長の冨田洋は、社内で大きな揺れを感じた直後、心の中でそう叫んだ。

 ジオ・サーチは道路下の空洞や橋の亀裂といった欠陥を発見・診断する建設コンサルティング会社。冨田は災害時にこそ企業としての役割が問われるという強い思いから、東日本大震災の3日後には被災地に調査部隊を派遣し、徹夜で作業に当たっていた。

 災害時に限らず、日本にある道路や橋、港湾などのインフラは問題を抱えている。

 日本の高度経済成長期に集中的に整備されたインフラが老朽化しており、維持・修繕など国や自治体の対策が急務になっているからだ。

 ジオ・サーチがインフラの診断に使うのは、「スケルカー」と呼ぶ2トントラック。改造した車体後部には、数十個のマイクロ波センサーが取り付けてある。時速60キロメートルで道路や橋などを走行しながら、センサーの反応を基に地中の空洞や鉄筋の亀裂など、外からは見えない危険を“透視”するのが大きな特徴だ。

 国や自治体からの要請でこれまでに調査した地点は約1万5500。距離にすると、累計で約9万4000キロメートルと地球2周分以上に相当する。着実に実績を積み重ねるジオ・サーチだが、冨田はもともと現在の事業分野に精通していたわけではない。

業績不振による会社の解散で
社内ベンチャーの事業引き継ぎを決意

 事業のきっかけは旧三井海洋開発で米国の駐在員をしていたころにさかのぼる。冨田は収益拡大に向けた新規事業を探る中で1300社以上の現地企業を調べ、既存設備の寿命を延ばすための維持・補修・検査の分野は、不況でも伸びていることがわかった。

「この分野で勝負できる新たな技術はないか」。日々目を光らせる中で出合ったのが、米ジョージア工科大学が軍用目的で開発した、マイクロ波で地中を探査する技術だった。