米国の特許法改正は、日本をはじめ世界各国の特許システムに大きな影響を及ぼすとして注目を集めていたが、今国会での成立は絶望的となった。訴訟コストの拡大など課題は山積しており、各国との制度的調和も求められている。特許制度改革は焦眉の急である。

 「製薬業界につぶされた」――。

 IT業界のロビイストたちは口々にこうつぶやいて、5月26日のメモリアルデーにまたがる三連休のバカンスに旅立った。

 2007年9月にようやく下院本会議を通過した米特許法改正案が、IT業界が後ろ楯の民主党を中心とする賛成派と、製薬業界が背後に控える共和党を中心とする反対派の激しい駆け引きのすえ、今国会で不成立となる見通しとなったのだ。

 実現すれば、19世紀以来初めてとなる米国の特許制度の大改革である。日本をはじめ世界各国の特許システムに大きな影響を及ぼすとして、全世界の注目を集めていた。

「米特許制度の大改革」で
注目すべき点

 なかでも、注目すべき改正点は3つあった。まず、現在、米国で採用されている先発明主義(先に発明した者に特許権を付与する)を、欧州、日本と同様の先願主義(先に出願した者に特許権を付与する)に移行し、制度的調和を取ること。

 次に、特許侵害裁判において、青天井で上昇している損害賠償額の適正化を図ること。「既知の技術を組み合わせた発明に対しては、先行技術に対する具体的な貢献を踏まえて算定すべきである」(米情報技術工業会〈ITAA〉のジョセフ・タスカー シニアバイスプレジデンント)、「とりわけソフトウエアについては、公正使用が認められなければならない」(米コンピューター情報産業協会〈CCIA〉のエド・ブラックCEO)とのIT業界の意向を十分くみ取ったものだ。