企業などの人材ニーズは以前と様変わりし、新卒であっても自ら課題を発見して解決策を提案するなど、自立してビジネスを組み立てられる人材が求められている。この動きに応えるため、大学のキャリア教育はますます弾みをつけてきた。社会に羽ばたく直前、最後の教育機会ともなる大学の取り組みについて、アールナイン代表取締役社長の長井亮氏に聞いた。

 

長井 亮 アールナイン代表取締役社長1999年、青山学院大学経済学部卒業後、リクルートエイブリック入社。リクルートを経て、2009年に人材採用支援会社・R09を設立。1200社を超える経営者・採用担当者へのコンサルティング、5000人の就職・転職相談の実績がある。今年、国際キャリア・コンサルティング協会を設立し、新たな資格制度創設に挑んでいる。著書に『20代で身に付ける成長の法則』など。

 大学のキャリアに対する取り組みを知る上で、あらためて理解しておきたいのが、就職に関する動向だ。これについて長井亮・アールナイン代表取締役社長は、「グローバル化、IT化の進展を背景に、企業が求める新卒人材像は大きく変わりました」と、切り出した。

 例えば10年ほど前までは、低コスト・大量生産が、企業にとって大きな課題の一つだった。ところが今は、低コストを実現するなら、海外生産という選択肢が真っ先に挙がる。また、大量生産よりも、独自の付加価値を持った製品・サービスが志向される時代だ。それぞれの顧客の属性に合わせたきめ細やかな対応が必要になる。顧客に関する膨大なデータを分析し、利益に結び付く要素を抽出して、商品・サービスを構成していくことが求められるわけだ。

 こうした中で、「従来は協調型の人材が好まれていましたが、自分で考えて自分で行動する自立型人材へのニーズが急速に高まっています」と、長井社長は分析する。そんな変化にもかかわらず、「就職を前にした大学生の一般的な姿は、企業が求める人材像とはかなりギャップがあるのが現実です」。その理由は、小・中学生時代からの教育環境にあるのではないかというのが、長井社長の指摘だ。図1を見てほしい。

「現在の一般的な学校教育システムについて見ると、小・中学生は、○×をつけるような正解があるものの結果を重視せず、厳密な優劣をつけない環境の中におり、高校生になると○×をつけるような正解があり、成績を重視され、結果を求められる世界に身を置くことになります。大学生になると、初めて○×のない模範解答なしの世界に入りますが、社会人には○×のような正解がない上に、さらに『結果』を出すことが求められるのです」(長井社長)

 ここで初めてのステージに立つことになるわけだ。