「傷が浅いと思ったホンダでさえもこのありさま。来期を考えると恐ろしい」と、ある自動車部品メーカー首脳はため息を漏らす。

 このありさまとは何か。言うまでもない。2月販売実績で41%減という、いまだに底が見えない米国市場だ。ホンダの2月の米国販売も、ゼネラル・モーターズ(GM)の前年同月比53%減はもとより、トヨタ自動車の同39.8%減に比べても軽微だが、同38%減とほぼ市場と同規模で4割近く減少(いずれも米オートデータによる)。特に、冒頭の部品メーカー首脳が驚きをもって指摘するのが、主力車種の一つ「シビック」の在庫日数だ。

 周知のとおり、米国でシビックといえば、売れ筋車種の代表格。それなのに、2月1日時点のシビックの在庫日数はなんと152日。適正水準とされる50~60日の約3倍。2008年1月1日時点の75日に比べても2倍にふくれ上がっている。「本来のホンダなら、せいぜい40~50日。一時期はずっと30~40日程度だった」(業界筋)。それが「破綻寸前のGMやクライスラー並みの日数」(アナリスト)なのである。

 主力車種の在庫急増に伴い、米国でのホンダの在庫日数も125日と拡大。トヨタ(91日)、日産自動車(85日)はおろか、低迷にあえぐ米ビッグスリーのフォード・モーター(120日)をも上回る。小型車「フィット」も、08年1月1日時点の57日から09年2月1日時点では104日に増えた。少なくとも在庫調整は6月までかかる見通しだ。

 なぜ、こんなに在庫が積み上がってしまったのか。

 そもそもホンダは、燃費性能に優れた中小型車が主体。昨年夏までのガソリン価格高騰の折、ライバル各社が苦戦するなかでも、着実に販売台数を増やした。トヨタ、日産は今期の予想営業損益が赤字なのに、ホンダは黒字。唯一の“勝ち組”との声もあった。

 ところが、数ヵ月遅れで状況は一変。昨年9月以降、シビックの売り上げは前年同月割れから戻らず、10月に28%も販売増だったフィットでさえも、11月には8%の減少に転じ、その後もほぼ横ばい状態が続いている。

 にもかかわらず、日本からの輸出は続き、米国輸入分のシビックは1月1日時点で201日、2月1日時点では266日まで拡大した。加えて、昨年10月には、米インディアナ州の工場が稼働し、シビックの生産を開始したため、さらに在庫が増えた格好だ。あるホンダ首脳は「需要を読み違えたのは確か」と本音を漏らす。要するに、思った以上には売れず、供給過剰となったのだ。

 もっとも、今回の場合、「結局、ホンダも例外ではなかった」(別のアナリスト)だけにほかならない。まさに“勝ち組”不在、業界軒並み壊滅という状況が事態の深刻さを浮き彫りにしている。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  山本猛嗣)