驚くべき李明博大統領の竹島訪問
日韓関係の停滞を極めて残念に思う

 韓国の李明博大統領が竹島を訪問した。2008年に当時の韓国首相の訪問はあったが、国家元首である大統領の訪問は初めてである。

 新聞報道だけから見ると、慰安婦問題をはじめ日本は韓国に対する加害者の立場を理解していないから、あえてとった行動だという。さらには、仮に天皇陛下が韓国を訪問したいなら、心からの謝罪が必要だと公言したという。

 一国の指導者が国家関係の基本や過去の経緯に十分な配慮をせず、無遠慮な発言をし、行動するのを見て驚きを禁じえない。李明博大統領は、日本は韓国を植民地支配した加害者だから、被害者である韓国がどのような行動をとっても日本はそれを受け入れるべきだといった認識なのであろうか。

 国家関係は互恵の原則で成り立っている。韓国大統領のこのような言動は日本側の強い反発を招くのは当然であり、日本側が望むわけではないのに日韓関係は停滞していくこととなるのだろう。少なくとも、韓国で年末の選挙を経て新しい大統領が誕生するまで、日韓関係は凍結されるということであろうか。

 私は日韓関係を増進することが日韓両国の利益と信じ、外務省で長年にわたって努力してきたので、これを契機に日韓関係が停滞していくのは極めて残念である。

 ただ、やはり隣国韓国との関係は大変重要であり、以下ではできるだけ客観的に問題整理をしてみたいと思う。

 分断国家であり、北朝鮮という特異な国家を北緯38度線の北に抱える韓国にとって、米国、中国、日本との関係は複雑微妙である。韓国にとって米国は安全保障を依存する同盟国であるが、基地を巡る事件事故など時として反米感情が強くなる。

 中国は最大の貿易相手国であり、将来の韓国経済にとって最大のパートナーであるが、時として政治体制の違いや歴史問題に関連し、対中感情が悪化する。日本は植民地支配を受けた国であり、歴史問題では韓国民が一致して反日感情を持つ。