「私立大学生の8~9人に1人が大学を中退している」

この驚くべき実態を指摘するのは、若者たちの社会的弱者への転落を予防するために、大学・短大・専門学校からの「中途退学」にフォーカスし活動しているNPO法人NEWVERYの山本繁理事長だ。現在、なかなか定職に就けないニートやフリーターが少なくないが、そんな若者を生み出す大きな理由の1つとして、「大学中退」を山本理事長は挙げる。なぜ若者は自ら入学した大学を辞めてしまうのだろうか。山本理事長に若者が大学中退を選ぶ理由と、中退の背景にある大学教育の問題点について話を聞いた。

偏差値と中退率には相関関係が?
中退者は年間11万人に

石黒 山本さんはこれまで大学中退者の予防に取り組んで来られていますが、実際、どれくらいの学生が大学を中途退学しているのですか?

私大生の8人に1人が中退者になっていた!?<br />大学から生まれる“格差社会ニッポン”の恐るべき実態<br />NPO法人NEWVERY山本繁理事長×ネットイヤーグループ石黒不二代社長【前編】やまもと・しげる
NPO法人NEWVERY理事長。1978年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。2002年に若者支援NPO法人「NEWVERY」の前身となる団体を設立。現在、理事長。「日本中退予防研究所」所長。著者に『人を助けて仕事を創る 社会起業家の教科書』(TOブックス)、『中退白書2010 高等教育機関からの中退』(NEWVERY)などがある。2012年7月から文部科学省高等教育局専門調査員を兼務。
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山本 現在、四年制大学の年間中退者は私立で約6万人、国立で約1万2000人、あわせて7万2000人、短大約7000人、そして専門学校が約3万7000人で、いわゆる高等教育機関中退者は11万人強と我々は推計しています。四年制私立大学では平均して8~9人に1人が辞めているのが現状です。高校中退が約7万2000人ですから、それ以上の学生が大学・専門学校からドロップアウトしていることがわかります。

石黒 そんなに辞めているんですか?全く認識していなかったです。これは以前よりも増えているんですか?

山本 実は文科省が調査をしておらず、正式なデータがないため、本当のところは全くわかりません。データも取らない中で国は今まで高等教育政策を立案・実行していた、ということなんです。

石黒 どういった大学の学生が中退しやすい傾向にありますか?

山本 偏差値の高低と中退率できれいに相関関係がでます。つまり、退学リスクの高い学生ほど、偏差値の低い大学に入学しているといえます。ちなみに、東大の中退率は卒業までに1%、早慶で5%前後です。ハーバード大学は2%、イエール大学が3%、プリンストン大学が4%と言われています。