そろそろ秋の検診シーズン。残暑が遠のくとともに「脱メタボ」を目指して運動を始める人も多いだろう。ウオーキングに代表される有酸素運動の効用は誰しも認めるところだが、いかんせん続かないのが難点。インドアでできる筋力トレーニング(以下、筋トレ)のほうが続けやすいかもしれない。ただ、肝心の疾病予防効果については有酸素運動の「補完」程度の認識だった。

 ところが、先日、ハーバード公衆衛生大学院の研究者らが一般内科専門誌に報告した試験結果によると、スクワットなど一般的な筋トレでも「単独」で2型糖尿病の発症リスクを下げることがわかった。試験では、およそ3万2000人の米国男性(年齢40~75歳)を1990年から2008年にかけて追跡調査。糖尿病を発症した2278人について飲酒やテレビ視聴時間、糖尿病の家族歴などの影響因子を排除した上で、運動の効果を解析している。

 その結果、全く何の運動もしない人の糖尿病発症リスクを1とすると、1週間で合計60分未満の筋トレを続けている男性は発症リスクが12%低下。60~149分では25%、150分以上、つまり1日30分の筋トレを週の5日間以上継続している男性では、34%も糖尿病発症リスクが低下していたのだ。

 筋トレの糖尿病予防効果を証明してみせた初の成果であり、研究者は筋トレ効果で大口の血糖消費先である筋肉量が増え、インスリン作用が改善すると指摘している。

 さらに、週に150分程度の有酸素運動を組み合わせたケースを解析すると、なんと6割近く(59%)も発症リスクが低下。それぞれ単独でも有用性は十分だが、両者を組み合わせることで相乗効果が期待できるようだ。ちなみに筋トレ効果は60代までが高い。中高年ほどフッキンすべきである。

 興味深いのは試験対象の平均体格指数(BMI)が25近辺であること。日本人基準なら「肥満」ギリギリラインなのだ。それでも筋トレ効果で糖尿病が予防できるわけ。太り気味を理由に有酸素運動に二の足を踏んでいる方は、まず筋トレから始めてみてはいかがだろうか。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド