一流秘書や経営者を始め、政治家、財界人、外資系トップ、芸能人たちを指導する、日本を代表する「国際儀礼(プロトコール)」と「マナー」の指導者である著者が、初めてビジネスパーソン向けの本を上梓。その本『どんな場でも、「困った人」にならない気配りの習慣』より、内容を抜粋してご紹介。全4回、今回は第2回です。

カジュアルな服装は迷惑?

 私は国際儀礼(プロトコール)とマナーの指導家として年間に200回を超えるレッスンや講演会を行なっていますが、その中でしばしば人に迷惑をかけないことの例として「高級レストランにカジュアルな服装はいけません」という話をします。

 すると、まだ出世をされていない若い受講生から「なぜそれが迷惑になるのか」「カジュアルな服装でもいいのではないか」と聞かれることがあります。もちろん、高級レストランといっても日本ではそのあたりがアバウトですから、カジュアルな服装で行ってもかまわない場合もあります。しかし「ジャケット着用、ノーネクタイはお断り」とあるお店に、その規則に反した格好で行くのは、「迷惑」になるのです。

 たとえば、トップエグゼクティブが愛用するようなレストランは、お料理だけでなくサービスも一流。来店するお客様が「非日常」を楽しみに来る場所といえるでしょう。また、そうした人々を迎える側も、期待に応えるために、洗練された空間を保ち、最高のおもてなしができるように努力しています。

 その中に、近所の商店街や公園にでも出かけて行くようなジーパンやサンダルといったカジュアルな服装で入ってきたりすれば、それだけでその場の雰囲気は壊れてしまいます。このことは、他の人をがっかりさせますし、大きな迷惑をかけることにもなります。

 マナーとは、他の人への思いやりの心を前提として、その心を、形式にしたもの。人として望ましい生き方について長い年月をかけてまとめられたものなので、他人同士が集う公共の場では特に、マナーに則った行動が求められるのです。