一流秘書や経営者を始め、政治家、財界人、外資系トップ、芸能人たちを指導する、日本を代表する「国際儀礼(プロトコール)」と「マナー」の指導者である著者が、初めてビジネスパーソン向けの本を上梓。その本『どんな場でも、「困った人」にならない気配りの習慣』より、内容を抜粋してご紹介。今回は第3回目です。

会社では教えてくれない!
「困った人」にならないための話題選び

 人とのコミュニケーションで大切なのが会話です。その話題にはどのようなテーマが良いのか、また会話のタブーに関しても、きちんと決まったマナーがあります。

 相手の方が初対面の人であるか、あるいは、既知の間柄で気心の知れた仲であるかどうかによって違いますが、ここでは初対面の人との会話についてお話していきたいと思います。

 まず、相手が初対面の場合、その人の年齢、信仰している宗教や政治的な思想、家族のことなど、プライベートな情報は聞かないことです。

 どうしても共通の話題が見出せない場合には、たとえば、まずは相手の方のネクタイやアクセサリーをほめたり、旅や映画、本や展覧会など、自分の最近経験したことで良かったことなどを素直に話すだけでも、会話は十分にできますし、お互いの好みや趣味をさりげなく知ることができるでしょう。

「江戸しぐさ」と現在の「国際儀礼」は
共通点が多い!

 私は、そもそも日本人の「気配り」は、本来、世界に通用するものだと確信しています。その理由の1つは、江戸時代に広まった「江戸しぐさ」と、現在の世界の基本ルールである「国際儀礼」には共通点がいくつもあるからです。

 江戸しぐさとは、漢字で江戸思草(仕草ではありません)と書きます。これは260年以上もの間、栄えた江戸時代にあって、江戸町方の商人たちが築き上げた、人付き合いの知恵、上に立つ者の行動哲学のことを言います。

 たとえば「時泥棒(ときどろぼう)」とは、人の家に突然訪問したり、約束に遅れたり…と、相手の時間を奪う行為のことで、「時泥棒は十両の罪」と言われるほど重罪と言われていました。これは今も通じるマナーではないでしょうか。