『週刊ダイヤモンド』

 金融危機の勃発以降、今年頭までは、だれもがドルを欲しがり、ドルが買われる局面だった。

 春以降になると、ドル買われすぎの修正が起こった。世界金融危機が沈静化し、「備えとしてのドルは不要じゃないか」となった。資源国通貨やリスクの高い高金利通貨が反発し、そうした通貨の対円レート(クロス円)もじわり高く(円安に)なっていった。

 その間、円に絡んだ為替市場のテーマは、景気の二番底懸念とクロス円だった。経済指標が市場の回復期待を裏切ると、株が大きく下がり、クロス円が下がる(円高になる)。為替市場ではそれを狙った仕掛けが何度も繰り広げられた。

 ところが9月に入ってからは、それまでの株とクロス円の上下の相関は崩れてきた。たとえば、クロス円が下がれば、ユーロの対ドル相場も一緒に落ちていたものが、ユーロは上がるようになってきている。要は、「ドル安」が非常に意識されるようになってきた。

 市場の流れは今、緩やかなドル下落に変わってきている。また円はドルに対して上昇圧力が増すいっぽう、クロス円においても高くなる動きが強くなっている。不気味な「円高のマグマ」が溜まり始めた。

 本特集は「為替入門」である。ただし、「投資家のための」に絞った「為替入門」である。基本中の基本については、ページを割いていない。「外貨投資をするにあたって、知っておくべき罠」について徹底解説している。

 「Part1 為替の落とし穴 」では、投資家が陥りやすい2つの大誤解について説いている。高金利に釣られて痛い目に遭わないための必須知識だ。

 「Part2 円高とドルの謎」では、通貨と経済について知っておくべき主要ポイントを解説する。

 円高になれば、輸出企業が苦しくなるのはもちろんだ。だが、メリットもある。その円高メリットがなぜ、現れてこないか。「ドル離れ」の根底にある懸念はなにか。さらにユーロや人民元と経済に関わる焦点についても触れている。

 「Part3 為替市場の謎」では、為替市場で暴騰と暴落が繰り返される理由を解明した、「経済物理学」の最新研究を紹介している。これまでの“経済学の常識” は明らかに覆された。

 「Part4 FXの裏側」は、FX投資家必読である。噂される「ストップ狩り」「レート操作」の実態に迫った。FX業界は明らかに大淘汰時代に突入している。

 「Part5 為替仕組商品の罠」は、為替に関係した複雑なる仕組商品の実態を追った。中小企業がオプションの地獄に落ち、デリバティブ汚染が自治体に蔓延し、多数の大学や公益法人などが爆弾を抱え込んでいる、その恐るべき実態を浮き彫りにした。

 「Part6 外貨投資の鉄則」では、主要13通貨(14通貨ペア)について、割安・割高度を長期的視点から分析した。長期投資の指針として欲しい。

 この特集を手にとって、「為替の罠のありか」を知っていただきたい。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 小栗正嗣)

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