2012年8月25日付の日本経済新聞朝刊において、ソニーのCFO(最高財務責任者)が、テレビ事業に係る「固定費削減が想定以上に進んでおり、2013年3月期の赤字見通し(800億円)を縮小したい」と述べていた。ソニーファンとしては、心強いコメントである。

 ただし、筆者は「固定費って『想定以上に』削減を進めていいものなのか?」という不安を同時に抱いた。同社については、第75回コラム(ソニー編)で取り上げたので、今回は、ソニー以外のエレクトロニクス・メーカーであるNECと富士通のデータを用いて、その真偽を検証してみたい。

 話の始まりとして早速、NECについて、本連載でおなじみのタカダ式操業度分析の時系列展開を〔図表 1〕に掲げる。

NECと富士通を“絶対的通説”で語るべからず<br />人員削減や固定費削減の前にすべき大切なこと

 〔図表 1〕の分析手法は、2008年10月に出版した『高田直芳の実践会計講座/戦略ファイナンス』が初出である。当初は、SCP分析(Sale Cost and Profit Analysis)と称していた。“Supply Chain ~”や“Structure Conduct~”などとの混同を避けるために、現在では「タカダ式操業度分析」としている。

セグメントを分析するなら営業利益、
全社を分析するなら当期純利益

 〔図表 1〕は、以降のセグメント情報と平仄(ひょうそく)を合わせるために、営業利益ベースとしている。当期純利益ベースとした場合、当然のことながら、〔図表 1〕の波形は異なるものになる。

 営業利益と当期純利益の使い分けで注意したいのが、リストラ費用だ。2008年9月のリーマン・ショック以降、上場企業の多くで、リストラ費用が特別損失に計上された。そのほとんどは、第1~第3の四半期ではなく、第4四半期に集中して計上される。

 〔図表 1〕は営業利益ベースであるため、リストラ費用は反映されない。本業に係る需給ギャップが、本業の儲け(営業利益)にどれだけの影響を及ぼしたのかを表わす図表である。