足元の金融市場は、金融不安の再燃や実体経済の悪化を懸念して、不安定な状況が続いている。昨年の年末から今年年初にかけて、米国のオバマ新大統領に対する期待が膨らみ、米国など世界の主要株式市場は安定を取り戻す局面が見られた。

 為替市場でも、それまで下落基調が続いていたドルに買い戻しが入り、底堅い展開を示すこともあった。当時、ニューヨークの市場関係者とメールのやり取りをすると、彼らが悪材料に飽き、新政権に大きな期待を寄せていることがわかった。

 しかし、最近、投資家の関心はオバマ政権に対する期待から、実体経済の下落傾向という現実に移りつつある。現実に目が移ると、依然底が見えない経済状況を無視することはできない。

 今後も金融市場は、オバマ政権に対する“期待”と実体経済の悪化という“現実”の両方を睨みながらの動向が続くと見られる。

本場ディーラーも必死で材料探し
“期待”と“不安”の行き着く先

 問題は、オバマ新大統領が「先行気味の“期待”を現実のものにすることができるか否か」だ。特に、オバマ新大統領が提唱する「現代版ニューディール政策」が、“期待”に応える効果を発揮できるかが重要なポイントとなる。

 仮に“期待”が“現実”になれば、米国経済は、年後半には「成長への自信」を取り戻すことができるだろう。

 一方、膨らんだ“期待”が“現実”になりそうもないと、人々の失望が大きくなることは避けられない。その場合には、米国経済の下落が続き、株式は一段の下値を模索することになるだろう。米国株式が売り込まれると、その影響はわが国をはじめ、世界の主要株式市場に波及する。

 それと同時に、ドルがさらに売り込まれる可能性が高い。それが現実味を帯びるようだと、世界経済は一段と落ち込むことにもなりかねない。オバマ政権の責任は、かくも重大なのである。

 米国の投資家やディーラーと話していると、一時期、彼らのオバマ新政権に対する“期待”が風船のように膨らんでいたことがわかる。あるアナリストは、「まるで一種の祭り騒ぎだった」と指摘していた。