経営不振にあえぐ半導体大手、ルネサスエレクトロニクスの早期退職制度への応募が殺到している。当初の募集人員は五千数百人だったが、ふたを開けてみると応募したのはその1.5倍近い7511人。約4万2700人の全社員の約18%が応募するという“人気ぶり”に、退職割増金を異例ともいえる分割払いにするなど、会社にとって想定外ともいえる事態が次々と発生している。

 ルネサスが早期退職を募集したのは9月18日~26日。対象となるのは主に勤続年数が10年以上の社員で、退職日は10月31日に設定された。早期退職に応募すれば、退職金に加え、勤続年数に応じて6~36ヵ月分の退職割増金を加算して支払う仕組みだった。

 また、募集人員に達しなかった場合には、退職割増金が加算されない整理解雇を実施する方針も事前説明会で伝えられたという。

 そして早期退職制度の応募初日を迎えたところ、「申込みがすさまじい」(労働組合関係者)。あまりの数の多さのためか、募集翌日の19日に、応募を締め切るケースも全国の工場で散見されたそうだ。

 想定を超える応募者に、ルネサスも慌てている。原資が足りなくなったのか、退職割増金の支払いを11月のほか、来年3月と9月の3回の分割払いする方針を決定し、応募者に伝えた。

 また、西日本のある工場では、募集人員を大幅にオーバーしたため、11月以降の工場の稼働に支障をきたす懸念が発生。応募者に対して、6ヵ月の短期の再雇用を会社側がお願いするという笑えない事態になっているという。

 今回の早期退職制度の実施で、ルネサスは7~9月期の決算で約850億円の特別損失を計上。また、制度の実施に伴う人件費の削減効果は年間で約540億円に上るという。ただ、2013年3月末で1500億円の赤字を見込んでいる業績予想への影響については「精査中」との説明にとどめた。

 ある社員は「業績不振とリストラを招いた経営陣に、社員は不安と失望でいっぱい。リストラでも経営陣の見通しは甘すぎる」と嘆いている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)