創造する経営者
ダイヤモンド社刊 1800円(税別)

 「事業が製品に対して支払いを受けることは、あまりに明らかであって忘れられることはない。しかし、製品には市場がなければならないことは、明らかでありながら、しばしば忘れられる。製品を市場に届けるには、流通チャネルがなければならないことも忘れられる」(『創造する経営者』)

 製品は市場にあって、流通チャネルを通じて、最終用途のために購入されて製品となる。しかし市場と流通チャネルのほうは、製品から独立して存在する。

 市場と流通チャネルは、コントロールできない。製品の変更は命令できても、市場と流通チャネルの変更は命令できない。

 ドラッカーは流通チャネルの重要性を訴える。特有の事情があるともいう。流通チャネル自身が、流通の経路であると同時に顧客であるからだ。

 流通チャネルは、製品に適合すると同時に、市場、顧客、最終用途に適合しなければならない。そしてなおかつ流通チャネルのほうが、製品と適合していなければならない。流通チャネルが製品と市場に合っていなければ、製品は市場に到達しないし、到達しても消費されないからだ。

 しかも現代の経済においては、流通チャネルは技術よりも速く変化する。さらに顧客のニーズや価値観よりも速く変化するという。

 「流通チャネルについての決定のうち、5年たっても陳腐化せず、新しい考え方や根本的な変化が必要にならないものはない」(『創造する経営者』)