1955年以降、一度も赤字になっていない。しかも、2001年度から建造量と売上高で日本一を続けている。「iMAZO」の当代社長に造船経営の勘所を聞いた。

今治造船社長 檜垣幸人 <br />海外船主と自ら意見交換して<br />リスクを取って勝負をかけるPhoto by Shinichi Yokoyama

──今年5月、再び三菱重工業との提携関係が復活した。

 三菱重工とは、1971年から長らく提携関係にあったが、2010年にいったん解消していた。

 過去10年間で、当社の建造量は約3.5倍になり、売上高も4倍以上になった。今回、提携が復活したのは、「強い者同士が組もう」という対等の話だったからだ。

 かつては、当社が三菱重工側に毎年一定の技術指導料を払っていたが、今後は両社間で図面(船の設計図)を売り買いする純粋な技術提携に変わる。非常に喜ばしいことだと考えている。

──1901年創業の今治造船は、「親子兄弟経営」のファミリー企業。いかにして、連結売上高4186億円(11年度)、建造量で世界4位の企業に成長できたのか。

 55年に檜垣一族が経営権を買い取ってから、一度も赤字になっていないし、人員削減もしていない。造船不況の時でも、さしてペースを落とさずに操業してきた。それが地元金融機関も含めた信頼関係につながっているのだと思う。

 まず、愛媛県今治市は日本最大の海事都市であり、瀬戸内海沿岸には造船に必要な舶用品メーカーが集中している。次に、世界の海運で名が通っている“愛媛船主”が多く住んでいる。当社の経営理念は、「船主とともに伸びる」であり、彼らと苦楽をともにしながら成長してきた。船は1隻20億~100億円という買い物なので、長いお付き合いが前提となっている。