今、地方銀行関係者が意外な企業を脅威と捉え始めている。小売業で売上高首位を誇るイオンだ。

 イオンはイオン銀行やイオンクレジットサービスなど、グループで金融事業を展開。2007年に開業したイオン銀は、12年3月期こそ黒字となったが高収益とは言い難く、イオンクレは貸金業法で総量規制が敷かれたことが影響し、利益拡大にブレーキがかかっていた。

 それがなぜ地銀にとって脅威なのか。理由は、今年9月にイオンが金融事業の再編を発表したことにある。

 来年4月に中間持ち株会社「イオンフィナンシャルサービス」を設立、銀行事業とノンバンク事業を再編成したうえで、傘下にぶら下げる予定だ。16年度に金融事業全体でなんと経常利益1000億円を目指すというのである。

 経常利益1000億円といえば、ナンバーワン地銀である横浜銀行の今期予想(945億円)より多い。イオン銀、イオンクレの11年度の経常利益の単純合算額は287億円であり、一気に3倍強に積み上げるというのだから驚くのも当然だ。

 もちろん、イオンは無茶な目標設定したつもりなどさらさらない。今回の事業再編では、まずイオンクレのカード事業をイオン銀に移管し、無担保ローンの総量規制の網から逃れる。

 イオンクレは有利子負債を膨らまさなくてもイオン銀が集めた低利の預金を資金源として海外展開等を加速できるようになるなど、その他の相乗効果も大きい。

 しかし秘密はそれだけではない。イオン銀で軌道に乗ってきた“小売りと金融の融合”をさらに推し進めることで、目標達成を後押しする。

 そもそもイオン銀は全国のイオンのショッピングセンター(SC)内に、土日祝日を含め、基本9時から21時まで営業するインストアブランチを展開している。