リーダーといえども他の者の範となるには<br />自らの得意を知る必要があるダイヤモンド社刊
1680円(税込)

 「何をしたいかではなく、何がなされるべきかから考えなければならない。しかる後に、何が自らの強みに合うかを考えなければならない。強みでないものを行ってはならない。他の者に任せなければならない。リーダーたる者は、自らが成果を上げるべきことを知らなければならない」(『プロフェッショナルの原点』)

 ドラッカーは、リーダーたる者は、なすべきことからではなく、なされるべきことから考えよとさえいう。なすべきことを考えよというと、安易に、なしたいことから考えてしまうからである。

 こうして、なされるべきことを考えたら、次に、それは自らがなすべきことかを考える。

 もちろんそのためには、あらかじめ自らの強みを知っておく必要がある。なされるべきことであっても、それが自分が不得意とするものであれば、他の者に任せなければならない。リーダーたる者は、自ら成果を上げるところをフォロワーに示さなければならない。

 不得意なことであったのでは、いかにその重要性を認識したとしても、他の者の範となる成果は上げられない。

 GEのジャック・ウェルチは、なされるべきことと結論しても、自らが得意とするものでなければ、トップマネジメントのうち、それを得意とする者に任せていた。

 トップマネジメントをワンマンによるものでなく、チームによるものにしておかなければならない理由がここにある。いかなるワンマンといえども、重要なことすべてを背負い込むことは不可能である。なされるべきことについて、成果を上げなければならない。リーダーたる者、先頭に立って成果を上げる必要がある。

 自らも傷痍軍人だったドラッカーの歴史の先生は、オーストリアの敗戦の原因を聞かれて、「十分な数の将軍が死ななかったからだ」と吐き捨てるように言ったという。将軍たちが戦場のはるか後方にいたのでは、戦争には勝てない。

 「50年前、私が最初にリーダーシップの問題を取り上げた。今日では誰もがリーダーシップを取り上げている。しかし、成果を上げることについて、もっと取り上げてほしい。実は、リーダーについて唯一言えることは、フォロワーがいるということだけである」(『プロフェッショナルの原点』)