中小企業は優秀な人材を集めるのに苦労する?
いいえ、そんなことはありません。
採るべきは、立派な大企業やいわゆる「普通の会社」では一次面接で落とされてしまうような「アホなやつ」や、入社後も早々に上司と衝突してしまいかねない「ヘンなやつ」。なぜ、「アホ」と「ヘン」が「一人一億」稼ぎ続けるために必要なのか。4代続く老舗中小企業に蓄積された人材にまつわる知恵を明かす。連載最終回。

「一次面接落ち」の人材こそ、採る

時代の荒波を乗り越える会社の鉄則<br />「アホ」と「ヘン」を大事にする山本富造(やまもと・とみぞう)高速水着素材で知られる大阪の山本化学工業株式会社・代表取締役社長。社員73名で、社員一人当たりの売り上げは1億円を超える。1959年、曾祖父、祖父は日本初の安価ボタン、父は消しゴム付き鉛筆で大成功を収めた発明家一家の長男として生まれる。1984年、25歳の時に父親の「社長、交代するで」の一言で経営者に。度重なる円高により長らく自転車操業を余儀なくされるも、「超高付加価値商品」に舵を切ったことをきっかけに逆転。現在は医療機器から放射線遮蔽服まで幅広く手がける。特技は少林寺拳法。正拳士四段を保持。ニックネームはトミー。

 会社に限らず組織っていうのは、社員みんなを同じ色に染めようとする。

 よその会社を訪ねると、若手から中堅、古参までみーんなどことなく似ている。たぶん、そういう会社は採用の段階から似たような人ばかりを採るようにしているんだろうし、入社してからも、ちょっとでもまわりと違っていたら、注意したり教育したりして直していくんだろうな。だから、何年かしたら年寄り夫婦みたいに似てくる。

 だけど、ウチの会社はそれをしない。「ヘンなやつ」はヘンなまま、「アホなやつ」はアホなままにしておく。「ヘン」とか「アホ」は、平たく言えば、型にはまってない人のこと。物事を見たり考えたりする時に、いろんな方向から捉えられる人を、僕は「ヘンなやつ」「アホなやつ」と呼んでかわいがってる。矯正しようとしない。のびのびさせておく。

 だから、そういうやつが隅で小さくなっていたり、奥に引っ込んでいたりしないで、結構存在感を放ってる。