サブプライム問題では、多くのマイナリティや低所得者が悪質な住宅ローンブローカーの標的となった。有力NPO、マブハイ・アライアンスのフェイス・バーティスタ代表に、庶民のサブプライム惨禍の深刻な実態と救済に向けた処方箋を聞いた。

フェイス・バーティスタ マブハイ・アライアンス代表
フェイス・バーティスタ マブハイ・アライアンス代表

 銀行が住宅ローンを返済できそうもない人たちに資金を貸し付けたことで引き起こされたサブプライム問題では、多くのマイノリティや低所得者が標的となった。とくにカリフォルニア州で約200万の人口を抱えるフィリピン系コミュニティは大打撃を受けた。それにしても彼らはなぜ、このようなローンを組んでしまったのか。

 フィリピン系のような移民にとって仕事で成功して自分の家を持つのは“アメリカンドリーム”だが、そう簡単に持てるものではない。ところがある日、住宅ブローカーやローン担当者に「あなたの年収でも家を買えますよ」と言われると、「本当か」と思ってしまう。でも現実は無視できないので、「月収3000ドルは無理でしょう」と言うと、ローン担当者は「それでは5000ドルで申請しておきます」と、所得証明書の提出も頭金の支払もクレジット審査も行わないまま、ローンを組んでしまう。本来、住宅購入者は銀行で慎重な審査を経て返済可能なローンを組むものだが、それがまったく行なわれなかったのだ。

 それでも住宅価格が上がり続けている間は、問題は表面化しなかった。が、いったん下がり始めると、借り手は住宅の価値以上の借金を負うことになり、追加融資も受けられず、支払ができなくなってしまう。そして多くが家を差し押さえられる羽目になった。

 「住宅購入者にも責任がある」との指摘もあるが、私はそうは思わない。そもそも返済できそうもない人たちに住宅ローンを組み、それに“偽りの価値“をつけて証券化商品に作り替え、世界中の優良顧客に高利回り証券として販売したのは、住宅購入者ではない。ほとんどの人たちは、純粋に家が欲しくて購入したのである。

 マブハイ・アライアンス(MA)はフィリピン系人口の多いバレーホやサンディエゴで、住宅の差し押さえを防ぐためのカウンリングやセミナーなどを行っている。アジア系移民のなかにはこの問題で銀行への不信感が高まり、ローン担当者と話しができなくなっている者が多い。そこで、MAのスタッフが銀行との間に入り、返済可能な額のローンに修正するなど話し合いをする。住宅一軒を差し押さえると売却などに5万~7万ドルの費用がかかるとされ、銀行にとっても所有者に家をキープしてもらった方が安上がりなのだ。