営業において、説得力・交渉力は不可欠なもの。これまでは自己流で身体で学ぶというのが主な方法でしたが、説得のメカニズムを「科学」しておけば、誰でも効果的に説得力を身につけられるのです。

 説得が大詰めにかかったときに迷うのが、相手から引き出したい意見や行動を、こちらが結論として明示するか、もしくは結論は相手に出させるように保留するかという問題です。この勘所をはずしてそれまでの説得に賭けた努力が無駄になってしまうことさえあります。ここは慎重に考えてみたいところです。

結論を明示するかどうかは
相手によって使い分ける

 このテクニックは言葉どおりの意味で、相手がとるべき意見なり行動をこちらが結論として指示するのが「結論明示」、結論を相手に出させるという意味で保留するのが「結論保留」です。

 ただし、結論を明示すればなにか無理強いしているようであり、結論を留保すれば論旨があいまいになるといった欠点がどちらにもあります。

 そして、どちらが効果的かという問題についても結論は分かれています。従来の研究結果を総合すると、次の3点に要約されます。

(1)相手の知的レベルが高いときは結論を保留したほうがいいが、知的レベルが低いときは結論を明示したほうがいい

 当たり前のことですが。知的レベルの高い人は自分の判断能力に自信を持っているため、自分で結論を出させるように仕向け、結論を明示して押しつけるやり方を避けたほうがいいということです。逆に、知的レベルの低い人の場合は、誤った結論に導かれることを避けるために結論を明示して、とるべき方向をはっきりさせたほうがいいということになります

(2)説得するための議論が複雑で高度な内容を含むときは、結論を明示したほうがいいが、そうでないときは結論を保留して、相手に結論を出させたほうがいい

(3)相手が自ら結論を導き出そうと強く動機づけられているときは、結論は保留して相手に結論を出させたほうがいい