復活した『ブランドで競争する技術』の入門編の短期連載もいったん最終回です。変化の激しい日本で、ブランドを使いながら、どうお金儲けをしていくか、最終回は、「男はつらいよ」と「水戸黄門」に学ぶ、顧客から支持され続ける方法について。

変わらぬ期待感が、
儲かるお客を連れてくる

 日本映画のロングセラーといえば、「寅さん」こと渥美清が出演する「男はつらいよ」。テレビの長寿番組といえば、昨年まで42年も続いた「水戸黄門」を思い出します。顧客にとって長い間愛され続けてきた、つまり、顧客をリテンション(維持、確保)し続けてきたこれらのコンテンツの共通点はなんでしょう? ここにビジネスをストック化し、お金持ちになるヒントがありそうです。

「男はつらいよ」も「水戸黄門」も、(場面や登場人物、シーンは変わっていても)ストーリーの骨格は毎回変わっていないという点が共通しています。たとえば「男はつらいよ」では、寅さんがひさびさに柴又に帰り、ドタバタ劇を繰り広げ、最後は失恋するというストーリーで一貫していますし、「水戸黄門」も、庶民を苦しめる悪代官が登場するのですが、最後は黄門様の印籠でたたきのめされます。

 これらの番組は、こうした骨格となるストーリー、枠組みがしっかりしているため、視聴者(ファン)たちに、「変わらぬ期待感」を持たせることに成功しているのです。そして、その骨格となるストーリーを支持するファンは、何度もこうした映画やドラマを見続けるのです。

 このメカニズム(顧客のリテンション)を、お客さんの視点に立ってもう少し掘り下げてみましょう。客は買い物をするとき、国内のあらゆる類似品をその都度細かく吟味し比較して、最高のコスト・パフォーマンスを持つ商品を選ぶ、ということは実際はしていません。そんなことを毎回していたら疲れてしまいます。では、どういう意識が働くのでしょうか?