2010年の世界経済を考えると、新興国の経済が元気であること以外、あまり明るい材料が見当たらない。世界の主要国が実施した経済対策の効果が剥落しつつあり、景気回復の足取りは極めて緩やかだ。

 年明け早々にも新規の対策を打たないと、景気の回復過程を持続することが難しくなる可能性が高い。

 わが国の経済に目を転じても、経済状況は大同小異だ。直近の日銀短観を見ても、雇用・設備の過剰感は解消されておらず、短期間に景気が盛り上がることは考えにくい。

 “子供手当て”が今年6月以降実施されることもあり、年後半には少しずつ明るさが増すという期待はあるものの、年前半に新興国向け輸出に息切れ感が出るようだと、二番底を迎えることも懸念される。

 そんな緩やかに回復過程を歩んでいる世界経済には、もう1つ忘れることができないリスクファクターがある。それは、「ソブリン・リスク」(国のデフォルトリスク)だ。2010年第1回目となる今回は、そのソブリン・リスクの可能性について、詳しく考察してみよう。

 リーマンショック以降、各国は民間の金融機関や企業の債務を肩代わりして信用状況を維持し、景気回復の下支えをしてきた。その結果、国自身が大きな債務を抱えることになり、一部の国に返済に対する懸念が発生している。

 なかには、債務残高が当該国の経済規模に比べて明らかに過大になっている国もある。

 最近、金融市場の専門家の間で、“PIIGS”という言葉がよく使われるようになった。“PIIGS”とは、ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの頭文字をとったものだ。

 これらの国々の財政状況の悪化が、市場参加者の信用リスクに対する懸念を増幅している。これまでの金融危機の実態は、バブル崩壊に伴う民間金融機関の経営悪化などが主な懸念だった。それが、政府そのものへの懸念につながったということだ。