秋葉原のドン・キホーテ8階にある「AKB48劇場」(エーケービーフォーティエイトシアター)。ココは、会いに行けるアイドルというコンセプトのAKB48にとって重要な拠点ですが、この“自前の専用劇場を持つ”というのは、初期投資や維持費が大きいもの。普通に考えればブレイク前のアイドルがそんなことをするのはかなり無理があるはずです。

この疑問を会計的にナゾ解いてみるとどうなるのか?新刊「強い会社の『儲けの公式』」より、なぜAKB48はブレイク前に駅前の一等地に専用劇場を持てたのか、を探ってみたいと思います。今回は後編になります。

AKB48は「ハイリスク・ハイリターン」ビジネス。
固定費が大きいビジネスは黒字になると儲けが大きい!

 そもそも経費には、変動費と固定費があります。会計的に考えると固定費の大きなビジネスは「ハイリスク・ハイリターン」です。固定費が大きい場合、損益分岐点を超え、一旦利益が出始めると加速度的に儲けが増え、逆に一旦損失が出始めると坂を転げ落ちるように赤字が積み上がっていくという特性があります。

 AKB48で考えてみると、変動費は、売歩と呼ばれる変動家賃と劇場で必要となるチケットの印刷代やグッズの制作費程度です。大半は劇場の固定家賃や光熱費といった維持費、彼女たちや運営スタッフへの給料=人件費だったりするわけです。

 固定費は観客が少なくても必ずかかる経費です。このように考えると、実はAKB48のコスト構造は、変動費よりも固定費のほうがはるかに大きな割合を占めているハイリスク・ハイリターン型のビジネスモデルといえます。

 とすれば、ここで、固定費を減らせばよい、という発想が生まれてきても会計的には不思議ではありません。そうすれば、全体の経費は下がり、経費トントンとなる損益分岐点も下がり、ミドルリスク・ハイリターンを目指せるからです。

 そもそも、彼女たちの成功要因のひとつに、AKB48劇場という箱モノの存在があります。すると、当然、劇場の維持管理費である固定費がドカンと発生することになります。劇場を建設することと、固定費が発生することは、避けられない事実として秋元氏側に現れるのです。そこで、この固定費を何とか下げられないか?と考えたのでしょう。