断絶の時代
ダイヤモンド社刊 2400円(税別)

 「新しいことを行うのも、すでに行っていることを改善するのも、かかる手間は同じである」(『断絶の時代』)

 ドラッカーは、一流の科学者と並の科学者を分けるものは才能ではないという。知識や努力でもないという。

 ニュートンやファラディのような一流の科学者たちは、初めから価値あるものを追求した。そうして自らの知識、知能、エネルギーを価値あるものに集中した。彼らはすでにあるものの延長や改良ではなく、新しい価値あるものを創造しようとした。それがゆえに彼らは一流の研究者になった。

 一流の事業も、一流の研究と同じように生まれ、育てられる。一流と二流の違いは目線の高さだ。小さく具体的にスタートしながら、トップを目指す。

 イノベーションにおいて重要なことは「成功すると、新事業が生まれるか」を考えることである。新しい製品ラインが生まれてほしい。既存の製品ラインに製品が1つ追加されるだけで満足してはいけない。さもなければリスクを冒すわけにはいかない。

 これは、既存の事業において改善や展開を検討する際の問題意識とは異なる。後者においてはリスクを最小にしようとし、前者においては成果を最大にしようとする。

 「私は毎年、ノーベル賞受賞者の記念スピーチを読む。彼らの多くが、受賞理由となった業績は『世の中を変える研究をやれ』との恩師の一言によってもたらされたと言っている」(『断絶の時代』)