「年末までに成長戦略策定」と
意向を一転した菅氏の思惑

 私は前回本欄で、菅直人副総理の「あえて半年間、足元の景気を見る」という発言に疑問を投げかけた。

 その後菅氏は、一転して「年末までに成長戦略を策定する」意向を表明した。これを私は大いに歓迎している。

 願わくば、政権発足直後の9月中に着手していれば、より本格的な作業が可能であっただろうと惜しまれる。

 それにしても、今年中にまとめることは時間的に至難の業だ。

 そこで考えられるのは二段階作戦だ。

 すなわち、年内に経済計画の骨子をまとめて閣議決定する。「中・長期の経済運営の基本方針」とすればよい。

 その基本方針を枠組みとして、年明けから本格的な経済五ヶ年計画の策定に取り組む。経済審議会に諮問してもよいし、菅氏直属の専門家集団を編成して作成する方法もある。

 国民的理解や協力を得るためには、中間報告を待たずに、すべての議論を直ちに公開し、新政権の経済政策に対する関心の高さを示すことも有意義だ。

 素案の作成を全面的に事務局(官僚)に任せると、各省との調整を経て、内容も方向性もあいまいになるだろう。だから、年内に政治主導で基本方針を決めれば、計画策定の軌道を敷くことができる。

 菅氏は、「環境」「雇用」「子育て」「景気」の『4K』を柱とするという。中・長期の経済計画だからそれでも肯ける。

 菅氏が年内にこだわるのは予算編成の歳入見積もりの前提となる「来年度の経済見通し」との関連を念頭に置いてのことだろう。