今回取り上げるのは、東京都にある産業技術大学院大学。大学院のみを設置する大学院大学で、工学系、しかも公立という、なかなかキャラクターのはっきりした大学院である。この学校は東京都の設立で、正確に言えば設置機関は首都大学東京(旧・東京都立大学ほか)と同じ公立大学法人である。

 ユニークなのが、産業技術研究科という唯一の研究科の下に、2つ置かれている専攻である。

 情報アーキテクチャ専攻は6つの大まかなコースがあり、『プロジェクトマネジメント』『セキュリティ』『ネットワーク』『データベース』『ソフトウェア開発』『CIO・マネジメント』。目標とするのは「情報アーキテクト」の養成で、概観すれば、IT系のスペシャリスト、システムエンジニアのさらに上をいく人材を養成しようとする意志が見える。

 一方、創造技術専攻のほうは、「感性と機能の統合デザイナーとしてイノベーションをもたらす『ものづくりアーキテクト』」の養成を担う。思い切り平たく言えば、プロダクトデザイナーとプロダクトマネージャーの上位概念であろうか。

 工学系の中でも学際的な展開の多い『IT』と『プロダクツ』の部分に特化した大学院。両者とも産業界、とくに企業に所属しているスペシャリスト兼クリエーターのような人材には注目すべきものがある。ありそうでなかった大学院なのである。2専攻を通じて「産業界におけるスーパープレイヤーの育成」を掲げており、目的意識のはっきりとした大学院である。

 学部から、もしくは工学系らしく、高専専攻科からの進学者を視野にいれている。実際、大学院が置かれている場所は東京都立産業技術高等専門学校とは同じ。設立者としては、「東京都の産業振興に寄与する高度専門技術者の養成」を目的としなければならない。

開発/情報部門の社会人は注目!
働きながら十分に通える便利さ

 一方でこの大学院にもっと注目すべきなのは、上記のように企業の開発部門、情報部門に所属する社会人だろう。

 情報アーキテクチャ専攻では、平日は夕方6時30分から始まる第5限、6限の2コマ土曜日の日中を開講時間とする、完全な社会人対応。

 創造技術専攻では平日の日中にも講義が設定されているものの、主力の講義時間帯は同様だ。

 京浜急行鮫洲駅、りんかい線品川シーサイド駅、JR京浜東北・根岸線大井町駅下車という足回りの良さを活かせれば、十分に働きながら通える。公立らしい良さは、良心的な学費。授業料年額520800円(予定額)のほか、で、入学金は282000円(同)のところを東京都の住民ならば141000円(同)になる。

 しかも科目等履修生制度が充実している。正規の学生ではなく特定の科目のみを受講して取得した単位は、後に入学した場合の取得済み単位に見なされるのはもとより、科目等履修生として支払った授業料に相当する額を、正規入学後の授業料から減免することができるのである。正規学生にするか科目履修か、というのは、社会人学生にとってリアルな選択だが、AIIT単位バンクと呼ばれるこのシステムは秀逸で、学生にフレンドリーである。

 入試は秋から冬にかけての3回。AO入試スタイルである第1回目は、目前の平成20年10月27日(月)までが出願時期であるが、必要な書類もそう多くはない。今から入学を検討しても間にあうだろう。おそらくはこの大学院があることを知らなかった人の中に、多数の相応しいひとがいるはずだ。

産業技術大学院大学