2012年はまれに見る政治の年だった。日米中露仏韓と世界の主要国で、政権が替わるか、新政権が発足した。それを投影して経済も不安定だった。さて、安倍新政権は、対外的には日中、日韓の関係改善という難題を抱える一方、大幅な金融緩和と財政出動を掲げてスタートを切る。政府部門はGDPの200%にも達する借金を抱え、再生は容易な道ではない。「巳年」の巳は草木の成長が極限に達して、次の生命が創られることを意味するという。果たして、日本は再生の糸口を見つけられるのか。そうした状況下、2013年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、5つのポイントを挙げてもらった。今回はエネルギー問題はもちろんのこと、内外の政治経済情勢にも幅広い見識を持つJXホールディングス渡文明相談役に5つのポイントを挙げてもらった。

原発「ゼロ」から「活用」へ再検討が進む<br />国民の自助・自立の精神が高揚する<br />――JXホールディングス 渡 文明相談役わたり・ふみあき
1936年生まれ、60年慶応義塾大学経済学部卒、日本石油入社、90年販売部長、92年取締役販売部長、95年常務、98年副社長、2000年日石三菱社長、02年新日本石油社長、05年会長、10年4月JXホールディングス相談役、同年5月から日本経済団体連合会審議員会議長も務める。

①自民党政権による経済政策の転換が進む

理由:3年ぶりに政権を奪還した自民党は、夏の参院選挙を控えて、年初から復興・防災対策の加速に加えて、徹底した金融緩和策と経済浮揚の呼び水となる公共投資の拡充に注力し、円高・デフレ脱却に向けた機運が高まっていく。

 さらに新たな成長分野での需要創出を目指して、医療、介護等の高齢者向けサービスの充実や、農林水産業の生産性向上、さらに技術立国を目指したイノベーション基盤の強化等につながる大胆な規制改革にも着手し、日本再生の足掛かりが整っていく。

②経済連携交渉が加速し、平成の開国の幕開けを迎える

理由:TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加をめぐって賛否両論が噴出するものの、政府が農林水産業の強化策と国益重視の交渉姿勢を明確化すること、で一気に交渉参加への機運が高まる。