新興国の台頭やバイオ燃料ブームに促されて記録的高値の更新を続ける穀物相場に、新たな価格上昇要因が加わった。

 その名も“非遺伝子組み換えプレミアム”。

 周知のとおり、日本の食品向け大豆やトウモロコシの大半は非遺伝子組み換えだが、その分野を狙い撃ちにした価格上昇が起こりそうなのである。

 近年、生産効率のよさから、日本の穀物の主要輸入先である米国では、遺伝子組み換え作物の作付け比率を上げてきた。

 害虫がつきにくい「害虫耐性」、除草剤に強い「除草剤耐性」などの特徴を持つ作物が主流だ。昨年は、大豆で約9割、トウモロコシで7割以上が遺伝子組み換えになった。

 作付け比率が減りつつある非遺伝子組み換え作物は、遺伝子組み換え作物との分別管理など手間がかかる。

 そのため、輸入元の商社などが穀物価格に数パーセントのプレミアムを上乗せして、米国の農家に非遺伝子組み換え作物を栽培させてきた。

 一方、農家の側もこれまでは、プレミアムを喜んで受け取って非遺伝子組み換え作物を栽培してきた。

 ところが、穀物価格の高騰で状況は一変。農家の実入りは3~5倍になり、BMWやベンツなどの高級車をどんどん買えるほどカネ持ちになった。

 そのため、「わざわざ手間をかけてまで、プレミアムをもらう必要はないと考える農家が増えている」(商社関係者)のだ。それでも非遺伝子組み換え作物を栽培してもらおうとするなら、さらにプレミアムを積み増しするしかない。

 しかも、「米国から穀物を輸入する国で、非遺伝子組み換えにこだわっているのは日本だけ」(商社関係者)とあって、ますます分が悪い。

 ここ数年でプレミアムの額はかつての3倍に跳ね上がった。今年は、さらに3倍になるとの見方もある。

 すでにその兆候はある。一年前、東京穀物商品取引所で、食用に使われる「Non-GMO大豆」(非遺伝子組み換え)の先物価格が、飼料用などに使われる「一般大豆」(遺伝子組み換え)を上回る幅は、10%程度だった。

 ところが、非遺伝子組み換えの価格が2倍になった今年は、35%程度まで拡大している。

 豆腐や味噌などを作る中小食品メーカーには、原材料価格の上昇分を製品価格に転嫁できず、倒産や廃業に追い込まれる企業も少なくないが、今年はさらに厳しさを増しそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 佐藤寛久)