「スズキはもう軽自動車のトップメーカーとはいえません」

 こう自嘲気味に語るのは、あるスズキの販売店店長である。

 その理由は明白。4月上旬に業界団体が発表した2007年度の軽自動車販売実績によると、ダイハツ工業がスズキを抑え、2年度連続首位になったからだ。

 しかも、「当面、ダイハツのトップの座は揺るがない」というのが、業界内では周知の事実。

 というのも、スズキは、輸出向けに需要が急増する小型車増産に対応するため、現在、建設中の新工場が稼働する2008年秋まで軽自動車の減産に乗り出しているからだ。

 実際、両社の2008年販売計画台数(暦年)を見ても、ダイハツが2.4万台多い。今年度もダイハツの首位はほぼ確定だろう。

 加えて、トヨタ自動車という大きな庇護の下で、軽自動車の開発・販売に専念できるダイハツとは異なり、いまや国際的な企業に成長したスズキの場合、海外展開に伴う小型・中型車の開発・販売にヒトやカネを取られ、軽自動車事業に集中できない状況になりつつある。

 さらに、販売面でもスズキは過度な販売至上主義を見直している。

 そもそも軽自動車をめぐる各社の競争は激しく、販売台数を稼ぐため、販売店が自ら新車を購入して登録するという自社登録が横行。特にスズキはトップを死守すべく台数至上主義になりがちで、「行儀の悪い売り方も目立った」(鈴木修会長)ためである。

 とはいえ、ダイハツは「首位の座は死守する考えだが、決して安泰とは思っていない」(箕浦輝幸社長)。34年間も軽のトップに君臨したスズキの強みを心底味わっているからだ。もちろん、鈴木会長も「必ず抜き返す」と断言する。

 ダイハツは昨年末には大分県で軽の最新鋭工場が稼働、コスト競争力を高めるなど、背後のスズキを少しでも引き離そうと、必死である。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣)