日系電機メーカーが海外攻略の戦略商品と位置づける“ルームエアコン”が、販売不振に見舞われている。2007年の世界のルームエアコン市場は約5200万台。中国(構成比43%)、北米(同16%)、欧州(同14%)、日本(同14%)の4地域で9割を占めるが、成長著しい欧州・中国市場で苦戦が際立っているのだ。

 まず、欧州市場の販売数量は前期比39%減(数字は4~6月。以下同)。なかでも、前期比6割減のスペインと、前期比5割減のイタリアは壊滅的で、「気温の上昇が遅れた影響もあるが、それよりも、住宅バブルが弾けたスペインなど南ヨーロッパ市場での個人消費の冷え込みが著しい」(電機メーカー幹部)のだという。

 また“世界最大”となる中国市場の販売数量は、前期比1割減。四川大地震の発生が消費マインドを低下させている。欧州向けの大部分は中国で生産されており、欧州・中国の不振が(中国市中の)過剰在庫を生み、安売り競争を招いている。

 中国では、別の事情もまた日系メーカーを苦しめる。消費電力を抑えられるエアコンを「インバータエアコン」というが、中国市場の9割強はノン・インバータエアコン。来年から、中国で販売できるエアコンの「省エネ基準」が厳格化されることから、品質の劣ったノン・インバータエアコンの乱売合戦になっている。

 「インバータエアコンを引っ提げる日系メーカーは、この不毛な戦いに参戦するわけにはいかない」(電機メーカー幹部)。今期の中国市場は、規模も利益も取りにくい環境下にあるのだ。

 “頼みの綱”は日本市場なのだが、悪天候のため前期比58%減となった6月最終週の不振が響いて、4~6月は前期比2%減と本調子ではない。

 もっとも、最近は猛暑が続いており、「7月第1~2週は、前期の2倍くらい。ただし、成熟した日本市場で盛り返しただけでは、世界市場の落ち込みをカバーできない」(電機メーカー幹部)。夏商戦を前に、出鼻をくじかれた格好だ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 浅島亮子)