「ジオキャッシュング」
「ジオキャッシュング」の日本語公式サイト。ゲームを楽しみたい方は、まずはここでアカウントの取得を。オリジナルグッズの紹介もある。

 突然だが、「ゲーム」と言われて、あなたが真っ先に連想するものは?――

 「ディスプレイ上で楽しむコンピュータ系のゲーム」を連想した人が大半ではないだろうか? コンピュータゲーム、オンラインゲームの凄まじい進化・多様化が、「現実世界で身体を使って行なう遊び」から人の嗜好を遠ざけてしまって久しい。

 だが、ここにきて、「現実世界での遊び」を積極的に取り込むタイプのオンラインゲームが注目を集めている。それが「代替現実ゲーム」である。英語で表記すると、「ARG」(Alternate Reality Game)となる。

 「ARG」は、アメリカで映画などのプロモート手法として注目され、2001年公開の映画「A・I」の世界に入り込める「THE Beast」がその先駆けだと言われている。

 そして近年、この分野のゲームの浸透に一役も二役も買う技術トレンドが起こった。現実世界におけるさまざまな「位置情報」を的確に知ることができる「GPS」(全地球測位システム)の普及である。

 そう、GPSが「オンライン」と「現実世界」の架け橋になり、2つの世界を自在にオーバーラップできるようになったというわけだ。

 そんなGPSを活用したARGの草分け的存在として人気を集めているのが、米国で誕生した「Geocaching」(ジオキャッシング)だ。

 ゲームのルール・仕組みは、きわめて単純。「cach」と呼ばれる「宝物」を隠す側と探す側に分かれて、プレイヤーが「宝探し」を楽しむものだ。

 ただし、宝物が隠されているのは仮想空間ではなく「現実の場所」。宝のありかの位置情報はGPSで取得されて登録されており、探すプレイヤーは、公開された情報やヒントをもとに、GPS端末で位置を調べながら、実際に探しにいくのである。

 ちなみにキャッシュは、コインやキーホルダーなど、あまり高価なものではないケースが多いとか。

 このゲーム、すでに全世界で100万人以上のプレイヤーがいると想定されている。公式サイトによると、キャッシュが隠されている国は、190ヵ国にも及ぶというから、驚きだ。日本においても、東京だけで500以上の宝物が隠されているという。

 さらに、この「ジオキャッシング」を地域振興の試みとして活用しようという自治体も現れた。伊豆諸島の式根島(新島も含む)である。

 同島の商工会では、09年9月に同ゲームを活用したイベント「式根島CITO(Cache In Trash Out)」を開催。企画には、ARGに詳しいジャーナリストの八重尾昌輝氏が参加した。

 PSPとGPSソフトを使って島のあちこちに隠された宝を探すゲームを楽しみながら、清掃活動をするという取り組みで、小学生20人以上が参加し、トラックいっぱいのゴミを収集したという。

 このイベント、清掃や地元の魅力再発見という地域貢献活動がゲーム感覚で行なえる点が好評を博し、10月にも行なわれた。

 こうした例からもわかるように、GPSを活用したARGは、「現実に人が動くこと」によって成果や収益が出る類の活動やビジネスに新たな活路を開く可能性を秘めていそうだ。

 言うまでもなく、その最大のものが、「観光」だろう。もしかすると、今年あたりから「ゲームをするために旅行する」という「ゲーム旅」が普及するかもしれない。

(梅村千恵)