再生紙偽装問題について、業界最大手の王子製紙の経営陣が、少なくとも1年前の2007年2月には、偽装の実態を把握していただけでなく、秘密裏に偽装の是正を行なうよう指示していたことが、わかった。週刊ダイヤモンドが入手した、経営トップが顔を揃えた内部会議の議事録や、関係者の証言で明らかになった。

 同社は1月の記者会見や、2月20日の経済産業省に提出した最終報告書の中で「現在の経営トップ(会長、社長、副社長の3人)が(古紙配合率の)乖離を知ったのは本年1月の年賀はがき問題報道を受けた社内調査の結果報告を受けた時期」としているが、議事録によればこの説明のうち、篠田和久社長と山本信能副社長については虚偽だったことになり、社長をはじめとした経営陣の進退が問われるのは確実だ。

 問題の会議は07年2月21日、洋紙の競争力強化について議論するため東京・銀座の本社会議室で開催。篠田社長や山本副社長(当時、専務)など取締役10人(当時)中、鈴木正一郎会長を除く9人が出席。本部長、工場長クラスの合計16人が顔を出すなど、同社の経営トップが一堂に会する重要な会議だったことがうかがえる。

 このなかで、再生紙偽装の実態の報告を受けた篠田社長は「今でも(表示どおりの古紙配合率の再生紙が)できていないのだから、(古紙が入手しづらくなる)これからはもっと難しくなる」と言及。

 さらには、報告書では昨年春頃から経営陣の知らないところで進められたとされる古紙配合率の是正についても、篠田社長は「営業がやりたいというなら進めていきたい」と発言、自らが隠蔽にかかわっていたことが明確に浮き彫りになった格好だ。

 このほか、ライバルの日本製紙が07年9月に100%再生紙の生産を中止することにも触れ、「当社もそれまでにあぶないものを止めておかないといけない」などとした発言が議事録に記載されるなど、違法性を認識していたことが読み取れる内容になっている。

 同社関係者は、「社内では経営トップが再生紙偽装の責任を下に押し付けて、保身を図ろうとしていることに不信感が高まっている。経産省に提出した最終報告書で幕引きを図ろうとしていることに対して憤りを感じる社員も多い」と語る。

 王子製紙は今回の再生紙偽装を受けて、コンプライアンス意識の徹底、管理体制の立て直しを図ると宣言したが、このままではその言葉自体が“偽装”だと取られても仕方ない。

 本誌の取材に対して同社広報室は「いつどんな内容の会議が開かれたかは企業秘密なので言えない」としたうえで、経営トップが偽装を知った時期については「報告書どおり」としている。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也)