鳩山邦夫元総務大臣が離党した。「坂本龍馬になりたい」と言い残して自民党を去った。自民党からの離党は93年に次いで2度目となる。

 離党・新党結成をこれほど繰り返した政治家も珍しい。筆者が元秘書として仕えた5年間だけでも2回の離党、3回の新党結成を経験している。

 新進党を離党する1996年当時のこと、鳩山氏の関心はもっぱら西郷隆盛にあった。

 「仮に西郷翁のように、政界の捨て石になっても信念を貫く。小沢流の政治の時代は終わった。友愛の精神でもって新しい政治を目指す兄(由紀夫)を支える」

 そう言って離党した3年後の1999年、今度は都知事選出馬に伴ってその民主党を離党する。

 「たとえ一人になっても構わない。自然との共生、環境政策のために現在の腐敗した政治システムと闘う。労働組合に乗っ取られた閉鎖的な民主党に一切、未練はない」

 前2回、秘書として支えた離党劇だったが、傍らにいた筆者としても十分に理解できるものであった。

 ところが、今回の自民党離党については、正直なところ、鳩山氏が何を目指しているのかさっぱりわからないのだ。

 「与謝野氏と舛添氏の接着剤になる」

 2人の自民党の政治家を接着させることがなぜ、日本の政治に必要なのか、さらにそのためになぜ離党しなくてはならないのか。鳩山氏が、自民党の将来と日本の政治を混同しているように思えてならないのだ。

 かつての離党は、「小沢政治の打破、友愛政治の確立」や「自然との共生、環境革命、労働組合政治批判」と目指す方向がはっきりしていた。

 今回は鳩山氏の口からそうした理念や方向性を具体的に聞いた試しがない。