あの名物社長からとび出す独特の語り口、本体商品にあれもこれも付けて値頃感を演出するセット販売――。テレビショッピング大手「ジャパネットたかた」の存在は、お茶の間では広く知られるようになった。

 目下のところ、ジャパネットの業績は絶好調。売上高は2005年906億円、2006年1080億円、2007年1161億円と右肩上がりに伸びている。

 「売上高の8割は家電製品で占められている」(ジャパネットたかた)ので、家電製品の扱い高の拡大が、そのまま売上高の伸長に直結していると言える。すでに2007年には、930億円を家電製品だけで稼いでいる計算で、1000億円を超える日も近いかもしれない。

 日本の家電製品の市場規模は約7.5兆円。そのうち約7割が大手家電量販店で占められており、ここ10年は一気に寡占化が進んだ。そんななかで、テレビ通販という新たな販売チャネルが躍進していることは、家電流通の寡占化と共に、多様化もまた進んでいるともいえそうだ。

 ジャパネット躍進の背景について、家電メーカー幹部の間では、「新発売から数カ月経過した型落ち製品の在庫をさばいてもらえる」「家電量販店のように高いリベート(販売協賛金)を要求されず、新製品を消費者に浸透させる“広告塔”としてテレビ通販は有効だ」との声が上がる。家電メーカーからみれば、「在庫処理」と「商品認知」の観点から、高いリベート(販売奨励金)や在庫引取りを強制される家電量販店チャネルと比べて、テレビ通販チャネルがより魅力的に映るようだ。

 もっとも、テレビ通販チャネルの将来性に疑問符をつける電機メーカーもある。

 「家電製品の高機能化・高額化が進んでおり、通販番組中の商品説明だけでは不十分。結局、価格でしか商品を訴求することができない。東芝やシャープはテレビ通販に積極的だが、ソニーや松下電器産業はテレビ通販チャネルに距離を置いている」(ソニー幹部)。

 別の電機メーカー幹部は、「かつて、米国市場でデルやヒューレット・パッカードが大画面テレビをネット通販しようとしたが失敗に終わった。消費者が性能・品質にこだわる日本の場合も同様で、実際に消費者が家電製品をチェックできる店頭販売が主流なのでは――」という。

 テレビ通販の将来性については、電機メーカーの間でも意見の分かれるところ。価格やセット販売だけに依存しないビジネスモデルの転換が迫られそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 浅島亮子)