内外景気の減速、為替相場の不透明感など気がかりな材料は少なくない。しかし、投資家心理が弱気に振れているときこそチャンスとなる。市場ではさまざまな材料が浮上するが、ここは素直に割安株に注目すべきだ。市場が売り込まれた後は、割安株投資が最も効果的である。その後の反騰局面で最も上昇幅が大きいことに加え、目先でさらに下げても下落が限定的となるからだ。

景気減速化の銘柄選別法 では、どんな株価指標から割安銘柄を探ればよいか。左の表は筆者が注目している7つの代表的指標だ。まずグロース(成長指標)は、経常利益成長率やROE(自己資本利益率)など企業の成長度合いを測るもの。これらも重要な指標だが、割安度合いを見るものではない。また誤解を恐れずにいえば、足元ではこれら指標の重要度合いは低いと考える。

 景気や業績の減速感が高まっている今こそ、高ROEの増益企業に注目すべきだと思う読者もいるだろう。だが、為替や原油価格が激しく変動し内外景気を見通しにくい状況下では、増益率やROEの情報としての信頼性に疑問符が付く。加えて、高ROE・増益企業に注目が集まり、過度に期待がかけられるため、株価が相対的に割高になりやすい。

 そこで注目すべきはバリュー(割安)指標だ。その代表格はPERとPBRである。このうちPERは株価を一株当たりの利益で割ったもので、企業が稼ぐ何倍までの株価で買われているかを見る。日本では、低PER株を買うと平均的に高い投資成果を生んできた歴史があるが、今年度は厳しいだろう。ベースとなる1株当たり利益の信頼性が低いからである。

 もう一つの代表的な割安指標であるPBRは、株価を1株当たりの純資産で割ったもの。企業が保有する土地や建物などの資産について、1株分の価値と株価を比較したものだ。筆者は、今年度は特にこのPBRに注目している。過去、低PER株が厳しいときは低PBR株が上昇する場面が多かった。これは資産価値のほうが利益よりも保守的な評価だからだ。そして円高はPBRに強い。ドルベースの資産価値上昇で、グローバルに割安度合いが強まるからである。

 そしてもう一つ、収益価値の投資指標としてEV÷EBITDA(イーブイ・エビットディーエー)に注目したい。EVは有利子負債に時価総額を加え、そこから現金預金などの手元流動性を引いたものだ。対するEBITDAは営業利益に減価償却費を加えて算出しており、これでEVを割る。PERよりも保守的な割安指標といわれる。下の銘柄リストは、2つの指標において共に上から3分の1に入る東証一部上場企業だ。PBRとEV÷EBITDAから期待される企業として要注目である。

(大和総研投資戦略部チーフクオンツアナリスト 吉野貴晶)